まる一世紀

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 今日の朝日新聞に、児童文学作家・翻訳家の石井桃子(いしいももこ)さんが、今年の3月10日に満100歳を迎えるという記事が載っていた。100歳を記念して、主要書店で記念フェアが開かれるらしい。
 100歳! すご〜い。まるまる一世紀を生きられたということか。おめでとうございます! 1907年といえばまだ明治だから、明治・大正・昭和・平成と4つの時代の生き証人なのですね。新聞には石井さんの写真も掲載されていたが、とてもお元気そうだ。「矍鑠」という言葉がピッタリの感じ。せいぜい80歳くらいにしか見えない(笑)。

こねこのぴっち (大型絵本)ちいさいおうち
 創作童話では「ノンちゃん雲に乗る」、そして翻訳では「ちいさいおうち」「こねこのぴっち」は言うに及ばず、「うさこちゃんミッフィー)」シリーズ、A・A・ミルンの「くまのプーさんプー横丁にたった家」などなど、綺羅星のごとき書名が次から次へと枚挙に暇がない石井桃子さんの著作だが、私が個人的にものすごく思い入れが強いのは、ジョン・メイスフィールドJohn Masefield作「夜中出あるくものたち」(石井桃子訳・評論社、asin:4566011208)。
喜びの箱 (評論社の児童図書館・文学の部屋)夜中出あるくものたち (評論社の児童図書館・文学の部屋)
 小学生2、3年生のころだったか、書店で見かけて題名にすごく惹かれてしまい、親にねだって買ってもらった本だった。英国の古い邸宅に住む少年の、夜ごとの不思議な冒険の物語なのだが、「夜中出あるく」というだけで、(当時の)子ども心にはたまらない魅力だったのだが、物語で描かれている英国の事物の描写にものすごく惹きつけられたのだった。私がこんなに英国(特に田舎)をこよなく愛するようになった最初の契機は、この「夜中出あるくものたち」なのである。それだけでも、この面白い物語は、私にとっては忘れられない一冊だ。
 さらに、この物語には、「喜びの箱」という続編(もちろん石井桃子訳・評論社、asin:4566011216)があり、こちらも英国のクリスマスの描写が素晴らしく、ものすごくハマった。教会なんか行ったことないのにキャロリングの存在を知ったのも、この本のおかげだなあ。うう、書いているうちにまた欲しくなってきた。実家に行けばあるのだけれど(笑)、また買っちゃおうかな。

(写真は、英国・アッパー・スローターUpper Slaughterにて。2005年7月12日撮影)