この世界のメタファー

 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』"Star Wars: The Force Awakens" 3度目の鑑賞は、年が明けて正月早々から妻とともに、109シネマズ二子玉川IMAX 3Dにて鑑賞。(今回もネタバレありです。ご注意を)
 IMAXで映画を見るのはこれが初めての体験。3Dはどうでもいいが、IMAXの画面の巨大さやクリアさと響き渡る音響の素晴らしさは想像以上で、いやあIMAXいいなあとすっかり感心。3DじゃないIMAX上映だったらもっといいのにな。2015年という、社会的にも個人的にも悲しく辛いことの続いた一年を綺麗に締めくくらせてくれたのが『フォースの覚醒』であれば、2016年を幸せに幕明けてくれるのも『フォースの覚醒』であるべきだなと思っていたので、このIMAX初体験は、3度目の鑑賞を新鮮な気持ちで体験することができて何よりだった。そして観終わってまた、胸がいっぱいになってしまった……。
 サントラをずいぶん聴き込んだので、どの場面でどの曲が使われているかだいたい把握できたし、台詞もけっこう身についてきた感じがする。なんといってもBB−8がカワイイ! あの丸みがイイ! 冒頭からマズ・カナタの酒場の場面までとラストシーンは何回でも観れるな〜。もちろん、ハン・ソロとチューバッカのツーショットも。ハンの"C'mon, Chewie!"の台詞が40年近く前のエピソード4『新たなる希望』と全く同じに聞こえて、その全然変わっていなさに本当に胸が熱くなったな。
 そして、12月27日の日記にも少し書いたが、「スター・ウォーズ」に出てくる様々な気候や環境の惑星は、この地球上の様々な土地や地域のメタファーである、ということに気づく。『フォースの覚醒』に登場する砂漠の惑星、森の惑星、氷の惑星などなど、ひとつの星が丸ごとひとつだけの気候というのは、実際にはきっとありえないような気する。まさに地球そのものがそうであるように、科学的に考えたら生物が住めるような惑星はある程度多様な気候や環境を備えているのではないかと。だから「スター・ウォーズ」シリーズの銀河系において、惑星から惑星へと旅することは、地球上の様々な地域を旅することのメタファーとして機能しているのだと思う。星と星との移動もハイパースペースを使ってあっという間だしね。まさに私たちが飛行機に乗って旅するが如し。
 それにしてもカイロ・レン(それともベン・ソロ?)のあの「橋のシーン」は、彼が父ハン・ソロに対して従順なふりの演技をしていたのか、それとも本当に「光の側」へ傾きかけていたのか。それまでの物語の中で、かなり抑制がきかない子供っぽい性格を強調して描かれた、ある意味かなり「現代的」な人物像だっただけに、あの場面での自分の行動に対して、どれだけ自覚的だったのか気になるところだ。ダークサイドに転向したものの、自分の中の“光”の存在によって葛藤していたのは間違いないわけで、祖父アナキン=ダース・ヴェイダーのように完全に「悪」へ振り切れていない自分に苦しんでいたのだろう(実際には『ジェダイの帰還』に描かれているとおりアナキンは「善」の心を取り戻して死んだのだが、そのことが後世に真実のまま伝わっているとは思いがたい)。レイへの惹かれ方も、もしかしたら最後の闘いの場面で地面が割れて離れ離れになっていなければ、その後の彼の行動はどうなっていたか気になるところだ。次作以降でカイロ・レンがライトサイドへ転向するかもしれないという予想もあり得ないことではない。これだけ要素が多いと、いろいろな可能性や選択肢がありうるな。「スター・ウォーズ」シリーズの制作者たちは、これからの物語において「どれ」を選んでいくのか。「思いがけなさ」を狙ってくるとは思うのだが。
(2017年12月19日投稿。2015年12月19日の日記2015年12月27日の日記同様、エピソード8『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』公開を前にして、2年前に『フォースの覚醒』を4回観た中で感じ考察して書き留めておいたことをどうしてもブログにも記録しておきたくて、今更ながら書きました。『最後のジェダイ』は観たけれども、この文章の中身は当時のメモから変えていません)