愛すべき映画

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 新三部作の完結編『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』"Star Wars: The Rise of Skywalker"を、公開初日の12月20日に109シネマズ二子玉川にて鑑賞。2019年4月18日の日記に書いた通りに、「物語の終わり」を見届けた。

(以下の文章ではネタバレはないつもりですが、全く映画の中身に触れずに書くのは不可能なので、作品を未見で気にされる方は、この先の文章についてご注意ください)

Star Wars: The Rise Of Skywalker (Original Soundtrack)

Star Wars: The Rise Of Skywalker (Original Soundtrack)

  • アーティスト:John Williams
  • 出版社/メーカー: Walt Disney Records
  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: CD
 

 いやあ……。

 作品の出来、と言う意味ではなくて……。

 終わり良ければすべて良し、でした(笑)。

 つまり、気持ちよくエンドロールを見られてよかったな、と。正直、ここまで晴れ晴れとした後味になるとは自分でも思わなかった。

 作品の出来としては、正直穴だらけだったと思う。前作『最後のジェダイ』のせいで生じた歪みを正してなおかつ終幕まで持ち込む必要があったために、相当な無理をしたであろう痕跡がありありと残ってしまっている。辻褄合わせのために明らかに今作だけで考えたでしょう系の設定が山ほどあるし、物語に要素を詰め込みすぎて駆け足のめまぐるしい展開だ。本当に、そのうちのいくつかだけでも前作に盛り込めたら、今作のせっかくのいい場面がもっとじっくりと描かれたであろうと容易に想像できるだけに、残念でならない。

 それでも、外してはならないと監督J・J・エイブラムズJ. J. Abramsが踏んだであろう、物語の最も主軸になるべきレイとカイロ・レン(それともベン・ソロ)の関わり合いのエピソードは、きちんと映画の中心に据えて描くことができた(この忙しい映画の中では、あくまで「ある程度」ではあるにせよ)のは、大いに評価したいし、そこを外さずに物語を構築したおかげで、この迷走しまくったサーガをなんとか綺麗に決着に持ち込めたのだと思う。前作では狂言回しの役に終始して、本当の意味での「主役」の座を与えられなかったレイは、ようやく今作で主役としての役割を演じていた。そして何よりも光と闇の中を揺れ動くカイロ・レン=ベン・ソロの、物語の中で果たした役割が実に大きかったことは、言うまでもない。この作品の演技賞を与えるとすれば、間違いなくアダム・ドライバーAdam Driverであることは、誰も異論のないところだと思う。

 そして、エンディングを見届けた私の気持ちは「赦す」。その一言に尽きる。

 こんな温かい気持ちに満たされるとは、正直自分でもびっくりしたくらいだ。かなり穴だらけでツッコミどころ多数のストーリー展開で、特に後半は勢いとエモーショナルな力でグイグイ突っ走るのに観るほうもついつい巻き込まれて(勢いに誤魔化されて、ともいう)終幕まで驀進していった印象すらあったのに、これはどういうことだろう。

 観終わって十日ほど立って、ようやくふさわしい言葉が思いついた。

 この作品は、「愛すべき映画」なのだ。

 欠点は数多くあれど、それを覆して「でもこの映画よかった」とか「好きだ」と言ってしまえる何かを、ひとつでも持っている作品。そういう「何か」が、この映画にはあったんだなあ、と。それは多分、単なる一個の映画作品としてだけでなく、あるいは新三部作の総括としてだけでもない。私が、1978年に11歳で初めて『新たなる希望』を観て以来、特に1980年の『帝国の逆襲』を筆頭に、このシリーズに強い影響を受けて生きてきた一人だから、でもあろう。いやあJ・Jよくここまで漕ぎつけたね、よくやったねお疲れ様でした、という、ものづくりに携わった経験を持つ少し上の世代の一人としての、労い(?)の気持ちもすごくある(笑)。もちろん、これらはあくまで私個人の感覚であるが。

 作家で優れた映画ブロガーでもあった故・伊藤計劃氏は、氏のブログ「伊藤計劃:第弐位相」の中で『キングダム・オブ・ヘブン』"Kingdom of Heaven"(私の大好きな作品のひとつでもある)について、こう書いていた。

この映画、俺は好きだ。なので、出来不出来はもうわからん。

 

    (「伊藤計劃:第弐位相」2005年5月14日の記事より)

 『スター・ウォーズ/スカイウィーカーの夜明け』についての私の言葉も、これと同じだなと気づいた。なんのことはない、私の「愛すべき映画」が、またひとつ増えただけなのだ。

 というわけで、これは私にとって「もう一度は観たい映画」になった。年が明けたらぜひとももう一度観て、この映画に対する感想をもっとたくさんの言葉にしてみよう(次回観たらネタバレを書かないとね!)。今回は2Dの通常上映で観たので、次はせっかくだからIMAXレーザーのある劇場で観てみようかしらん。

 参考までに、いくつかネタバレなしレビューのリンクを貼っておきます。

jp.ign.com

theriver.jp

www.newsweekjapan.jp

 

 ↓こちらの動画は完全ネタバレトーク。全てに同意見というわけではないけれど、観ていて面白かったので貼っておきます。


『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』ネタバレトーク:第120回 銀幕にポップコーン

(2019年12月30日投稿)