【読了記録】芸術人類学とは

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(写真は2014年7月19日に、アイルランド・ダブリンの国立考古学・歴史博物館(National Museum of Ireland Archaeology & History)にて撮影)

 

 鶴岡真弓編『芸術人類学講義』(ちくま新書)を、この日に読了した。

芸術人類学講義 (ちくま新書)

芸術人類学講義 (ちくま新書)

  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: 新書
 

 このちくま新書の「講義」シリーズは、新しい知の扉を開けるのにちょうど良い手頃さと分量を備えているので、私はけっこう気に入っている。

 編者のケルト文化・装飾美術研究家である鶴岡さんご自身が所長を務める、多摩美術大学芸術人類学研究所Institute for Art Anthropologyの研究活動のエッセンスを、広く新書の形で伝えようという企画なのだろう。執筆者4名は全てこの研究所のメンバーで、鶴岡さんご自身を始め、椹木野衣さん・平出隆さん・安藤礼二さんと錚々たる顔ぶれである。

www.tamabi.ac.jp

 いやしかし、久しぶりに「手ごわい」一冊でした〜。いかに自分が、抽象的思考に対して「抽象的に思考することができていないか」を思い知らされた。どうしても私は、思考の対象をを頭の中で映像化あるいは図式化して考える癖がついてしまっているのだな〜と。文字を追うのが精一杯で、ラストにようやく「辿りついた」という感じだった。ホント、まだまだです。

 しかもこのうち3人の著書を私は「積ん読」していることもあって(平出隆著『伊良子清白』、安藤礼二著『霊獣の書』、鶴岡真弓著『ケルトの想像力』。鶴岡さんの他の本には既読のもある)、余計に焦ってしまう(笑)。これはまた、近いうちに再読して「血となり肉となり」しないとなあ。

 各人の主張で共通しているのは、芸術的活動を、才能ある特殊な個人の活動の表出としてではなく、人類という「種」全体、つまり種の根源に根ざし、根源から湧き上がるものとして捉えようとしていることだと思う。これこそが「人文知」が人類に切実に必要とされている、大きな要因ではないか。

 人類はなぜ「芸術」を欲するのか。

 この問いに対峙するために、単純に人類学の手法を芸術に当てはめるのではなく、「芸術人類」を探ってゆく新たな方法を模索すること。そのような未踏の学問の試みが、この一冊に込められているのは確かである。

(2020年7月23日投稿)