【読了記録】物語ることの豊穣

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 朝井まかて著『雲上雲下』を、この日読了。この著者の小説は初読だった。

 朝井まかて氏は時代劇専門の小説家というイメージがあって、正直今まであまり興味が湧かなかったのだが、この作品は民話(昔話)と物語ることにまつわるファンタジー小説だと聞き、ファンタジーなら思い切り私の守備範囲ど真ん中ということもあって、にわかに強烈に読みたくなった次第。

  物語の聞き手として登場する子狐どんの可愛らしさにニコニコしながら、朝井まかて流にアップデートされた昔話をいくつも渡り歩き、豊穣な語りものの世界を楽しむうちに、いつの間にやら「物語ること」の意味と意義を問う壮大で神話的なメタフィクションの世界に嵌まり込んでいてびっくり。まさに物語展開の妙技。

 物語ることが人間にとって大切なものかを問いかける、とても重要な作品に出会った。特に、物語の真髄は細部とプロセスに宿ることを強調していることはすごく大切。この本を読んで思うことは多々あるので、また別の機会に書くとしよう。

(写真は2021年6月17日に、CANON EOS Kiss Mにて撮影)

(2021年7月8日投稿)