レシピを自分のものにする、ということ

 ピーマンの肉詰め焼き(下の写真)。

 私の妻がこの日の夕食の主菜に作った料理だ。

 家庭料理としてかなりポピュラーなイメージのある料理だが、作るのにかなり手間がかかるせいか、意外と食卓に上がる頻度が少ないような気がする。

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 この料理を作る際に元ネタとして妻が参照したレシピは、若山曜子著『30分で3品! 毎日のふたりごはん』所収のレシピだ。

 このレシピの特筆すべき点は、ピーマンの肉詰めをオーブンで焼くところ。こうすれば肉がピーマンから剥がれる心配がなく、焼いている間に他の副菜などを作れて手間を減らせるからだという。

  妻はオーブンをとても頻繁に使う人なのでオーブンの利点を熟知しており、さっそくこれもオーブンで焼いてみたところ、確かに挽肉がしっかりとピーマンにくっついて一体化しており、食べている間も肉とピーマンが分離しにくかった。以前に料理教室で教えるレシピを作成するために、いろいろなピーマンの肉詰めのレシピを検索して試作したことがあった私の妻だが、この作り方はいたく気に入ったらしい。

 このレシピでは本日が二度目だったが、オーブンで焼いたためにひき肉の旨味がしっかりと閉じ込められて逃さず、また挽肉に豆腐を加えるので、ふんわりした食感が実に良い。さらに、隠し味的に使われている梅干しと柚子胡椒の風味もさりげなく効いている。全体として、かなり和風の味付けなのが特徴的だ。

 私の妻は元レシピをガンガン変えて手を入れていくことが多く、食材を身近で手に入りやすいものに変えたり、作り方や味付けを私たちの好みに合うよう変更するのは日常茶飯事。そういうプロセスを経て、レシピを自分のものとして身につけてゆくという。

 その点では珍しく、妻はこの料理をほぼ元レシピ通りに作っているが、今回は一点だけ変更した。元レシピではナンプラーが小さじ1程度使われているのだが、前回その通りに作ったらナンプラーの香りが料理全体を支配してしまい、せっかく入れた他の風味を圧倒してしまった。そこで今回は、ナンプラーの代わりに少量の醤油を使ったところ、隠し味的な梅干しや柚子胡椒の風味もよく立ち上がってきたので、私たちにはこちらが正解のようだ。加えて、味わいにさっぱり感が増したことも好印象だった。とても幸福な、食のひとときだ。

 

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 この日の副菜に登場したのはヤムウンセン(タイ風春雨サラダ、上の写真)。

 この料理で妻が参照したレシピは、ワタナベマキ著『アジアのごはん』に所収のもの。エスニック料理をもう少し作ってみたいと、先日手に入れたばかりの本だ。

  こちらも、元レシピはむき海老を使用しているのだが、妻はたまたま近所のスーパーで豚こま肉が安かったのでそれに変え、さらに手に入りにくい青パパイヤもきゅうりで代用して作った。実に美味しく出来上がったので、全く問題なし(笑)。

 多少(かなり?)元レシピから外れても、それぞれの好みや事情に合わせて美味しくレシピの料理を作ることができて、幸せな食のひとときが送れるのであれば、それこそがレシピを作った人の本望であるように思う。

 私の妻は、これからもこうやって「自分のレシピ」を増やしてゆくだろう。

(2021年7月8日投稿)