世田谷代田も「自分ちの庭」ですが、何か?

小田急線・世田谷代田駅前から富士山を望む。2022年11月10日撮影)

 

 ふとしたきっかけから、現在フジテレビ系列で木曜日夜10時から放送中の連続テレビドラマ「silent」(サイレント)の、11月5日放送の第5話を観た。

 第5話を観たのは、このドラマの存在を知り観てみようと思った時点で最も早い放送分だったから。この回だけ観たかった特別な理由があったわけではない。

 

www.fujitv.co.jp

 

 NHK大河ドラマ以外の連続テレビドラマ(特に民放の)をもうここ何年も観ていない私が、急に一体どうした風の吹き回しか。

 理由は簡単。「silent」の舞台のひとつとして、小田急世田谷代田駅が実名で登場し、その周辺共々主要なロケ地として頻繁にドラマ内に登場するということを知ったからだ。

 世田谷代田ですと? 我々の日々の散歩コースのひとつではないですか。 ウチの庭で何してんねん!? というワケです(笑)。

 

eigatowatashi.com

 

 生まれ育った世田谷区代田の実家へ昨年9月に(家を建て替えて)戻ってから(2021年12月30日の日記参照)、インスタグラムに近所=下北沢周辺の写真を投稿する際には、よく「#シモキタは自分ちの庭」というハッシュタグをつけるようになった。半分冗談、半分本気で。それほどに下北沢の街は我が家からとても近く、文字通り「自分ちの庭」のような感覚。私のホームタウンだ。

 小田急線の世田谷代田駅はその下北沢のすぐ隣の駅で、とても近い。正直、下北沢から歩いても高が知れている。小田急線の地下化に伴い2年前の春に線路跡地に「BONUS TRACK」(ボーナストラック)が開業し、下北沢から世田谷代田まで線路跡を通って直線で行けるようになってさらに「近く」なった。もちろん、我が家からも歩いて10分とかからない。下北沢が自分ちの「前庭」なら、世田谷代田はさしずめ「横庭」だ。

 

bonus-track.net

 

(「BONUS TRACK」にて。2022年11月1日撮影)

 

 そんな我が家の庭に等しい世田谷代田やその周辺がロケ地に使われているというのだから、どんな風に映っているのかドラマを見てみたい気持ちになるのは人情というもの。生まれ育った代田や下北沢への郷土愛に溢れている私としては、日常生活の中でとてもよく親しんでいる地元の街が、ドラマの中でどんな風に使われて、視聴者にどのような印象を残すのか、興味津々だ。

 なんでもドラマを企画する初期段階から小田急電鉄が関わっているそうで、メインのロケ地に世田谷代田駅を提案したのも小田急側だったらしい。線路の地下化で駅舎を建て替えたばかりでとても綺麗な上に、下北沢という東京でも類を見ない唯一無二の街のすぐ隣でありながら乗降者数がさほど多くない(=ロケがしやすい)というのが決め手だったらしい。

 というわけで、先述の通り、その時点で最も早い木曜日の11月5日に放送された「silent」第5話を録画しておき、数日後に鑑賞した。ドラマそのものはたいへん面白く観たのだが、この回には世田谷代田駅やその周辺はロケ地として登場しなかった。残念。

 調べると、民放共同で運営している公式テレビ配信サイト「TVer」で「silent」の第1話〜第3話が配信で観られることが分かり、さっそく第1話を観た。長時間パソコンの小さな画面に目を凝らし続けるのは私の弱った目には非常にしんどいので、目の負担を軽減すべく手持ちのMacBook Proを我が家の40型テレビに繋ぎ、その画面をテレビにミラーリングして大きい画面で鑑賞した。

 

tver.jp

 

 この第1話では私たちの期待通りに、世田谷代田駅がご丁寧に駅名の看板入りで何度も画面に登場。さらには周辺の、私たちがよく知っているお馴染みの場所がいくつも出てきて実に楽しかった。

 川口春奈さん演じる主人公の青羽紬が目黒蓮さん演じるかつての恋人・佐倉想と衝撃の再会を果たす、この回のクライマックスシーンは世田谷代田駅のすぐ前、環七こと環状七号線にかかる「代田富士見橋」(名前の通り、晴れた日はここからの富士山の眺めが実に美しい)が舞台。紬が現在の恋人である戸川湊斗(演:鈴鹿央士さん)と語らいながら歩くのは、下北沢と東北沢(世田谷代田とは反対側の隣駅)の間の線路跡に昨年開業した「reload」(リロード)の脇を抜ける道。などなど。

 

reload-shimokita.com

 

 こうも私たちの日々の生活でお馴染みの場所が次々と出てくると、それだけでもこのドラマに親近感が湧くのは確かだ。ドラマそのものが良く出来ていてなかなか面白いだけに、尚更だ。これは残りの回も観ないと。

 

(「reload」脇を抜ける道にて。2022年9月5日撮影)

 

 それにしても、このところ下北沢と世田谷代田の間のあちこちを行き来する人が急に増えたなあと思っていたのだが、こういう事情があったとは。「silent」はかなり人気のあるドラマのようだから、わかりやすくドラマの画面に駅名が登場した世田谷代田駅をメインに、ロケ地巡りをする人々がこの辺りに来ているのだろう。納得だ。

 第1話の配信を観た数日後に、散歩で世田谷代田駅前を訪れると、駅の看板をバックに記念撮影する人や、ドラマの中で目黒蓮さんが座っていたベンチに代わる代わる座ってドラマと同じ仕草をする人々、駅の向かいの代田富士見橋の真ん中でドラマの場面を再現する風の人などを、ちらほらと見かけた。ドラマの人気は、確実にこの周辺の賑わいに貢献しているようだ。

 今や全国規模に成長したコーヒーや輸入食材のショップ「Kaldi」(カルディ)の発祥の地として、つとに名高い世田谷代田。だが、私が幼少の頃から新しい駅舎が完成する数年前までの数十年間は、実に閑散として何もないところだった。それがここ数年、少しずつ個性的な店が出てきて徐々に人が増え始めたところなので、このドラマの人気がこの近辺の盛り上がりを後押ししてくれるのは、それはそれで喜ばしいことだと思うのである。

 

 

 そのうちにドラマの内容についても、何か書ければ。モチーフやメタファー、隠喩の使い方や繰り返し方がとても巧みな物語構成。そして先述の世田谷代田やタワーレコード渋谷(ここももちろん私には超お馴染みの場所)にバンドのスピッツやLINE通話など、実在する事物を出すことで視聴者の共感度を上げる小わざの利かせ方。いろいろに「語りたくなる」要素が詰まったドラマのようである。

 とりあえず私としては、一昨年の大河ドラマ麒麟がくる」の帰蝶姫(川口春奈さん)と、昨年の大河ドラマ「青天を衝け」の民部公子さま(板垣李光人さん)が、姉弟としてキッチンに並んで立つ姿が、なんとも可笑しく微笑ましく感じてしまうのであった(笑)。

 

世田谷代田駅の近く、代田八幡神社にて。2022年1月2日撮影)