
幼少の頃からスポーツ、特に球技が苦手だった私は、スポーツ観戦もあまり積極的にすることがないまま成長し、今でもほとんど観ることはない。しかし男子サッカーの国際的な大会、より正確にいうとFIFAワールドカップ(W杯)だけは例外で、開催されると人並みに(?)何試合かテレビで観戦することが多い(欧州選手権も好んで観たい大会なのだが、地上波で放映される機会がないのであまり観ていないなあ。サブスクは基本的にやらないし)。
それは、大学時代に交換留学で英国に一年間暮らした際の経験が大きかったように思う。ちょうど1990年イタリア大会が開かれたときでその熱狂に間近で立ち会い、現地英国の、そしてヨーロッパ中の人々が、いかにこのサッカーの国際大会を重大に特別に捉えているかを肌で強く実感したのだ。今でもサッカーの国際試合をテレビで観ると、あの頃の熱気が戻ってくるような感覚を覚えることがある。
とはいいながら、W杯も4年毎の開催の度に徐々に熱量が下がってきており、今年(2026年)の北中米大会に対しても、開催前はまあ日本代表が頑張ってほしいなあ、くらいの低めの熱量だった。
ところが開会を控えたある日、何気なく今回のW杯の出場国を眺めていて、ある国の代表チームの名前があることに気がついた。
えっ、ノルウェー!?
なんと、私の大好きな国ノルウェーの代表チームが出場するの!?
ものすごく久しぶりじゃない???
調べたら1998年のフランス大会(日本代表が初めて本大会に出たときだ)以来、実に28年ぶり(7大会ぶり)の出場らしい。しかも今回からの出場国の増加に伴って運よく出場できたというレヴェルではなく、「怪物」と呼ばれるほどすごい若手フォワードのアーリング・ハーランド(アーリン・ホーラン)選手Erling Braut Håland(Haaland)を擁して、FIFAランキング31位ながら優勝も狙えるほど充実したチームだとか。
これを知って、一気に今回のW杯への熱量が増大した(笑)。日本代表チームももちろん応援するつもりだったが、開会前から私にとって一番の注目はこのノルウェー代表だった。

そもそもは北欧神話とサーガへの興味から入った(だからスウェーデンでもデンマークでもフィンランドでもなかった)のだが、高校生の頃から私の中でノルウェーはアイスランドとともにヨーロッパの中で、いや世界の国々の中で、常に特別な位置にある国だった。大学では西洋美術史を学ぶ中で、ノルウェーに多く残る組紐文様が特徴的な中世の装飾美術やヴァイキング文化に大いに惹かれた。その大学時代に交換留学で英国に滞在した一年間では、休暇中に西ヨーロッパをあちこち回るつもりだったのだが、当然のようにノルウェーに真っ先に行くと決めていた。
ノルウェーには、その留学中の訪問と勤め仕事時代の出張も含めて、今までに合計4回行っている。留学の一年間滞在とその後5回旅行した英国と、留学時の訪問を含めて6回旅したイタリアに次いで多く、その2国と同じくらい強い愛着を抱いている国だ。ノルウェーに行くたびに、フィヨルドに代表される雄大さと静謐さの両面を併せ持つ大自然の風景や、穏やかで心温まる気遣いのこもった人々とのふれあい、ロマネスク時代の特異な木造教会をはじめとする建築や美術の数々に魅せられてきた。

ちなみに、私が毎年騒いでいる(笑)自分の誕生日とノルウェーの最も重要な祝日「憲法記念日」、つまりノルウェーの国の誕生日とが同じ5月17日だという「偶然の一致」は、けっこう後になって初めて知った。この日記を遡って見ると、どうやら2009年ごろだったようだ(2009年5月17日の日記参照)。この年の7月には私たち夫婦は当のノルウェーに旅行しており、旅先で出会った現地のノルウェー人に私の誕生日が5月17日だと話すと、皆一様にまず目を丸くして驚き、それからこの上ない笑顔を見せてくれたのを思い出す。
英国やイタリアほど日本ではメジャーではない国なので、日本の日常の暮らしの中でノルウェーやノルウェー人に関係した情報に接する機会はそれほど多くない。却ってそのことが、私にとってノルウェー情報に接した際の熱意の度合いを強めている気がする。今回のW杯のことがまさにそうだ。
そんな経緯があって、今回のW杯はグループリーグ2戦目からノルウェー代表チームが出る試合をテレビで観てきた。我が家のテレビは地上波だけで有料のサブスクも一切やっておらず、2戦目のセネガル戦は朝の支度や洗い物などしながら観戦したが、その後ちょっと事情があってDAZN(ダズーン)の配信に1か月だけ登録したので、以後の3戦目(フランス戦)と決勝トーナメント1戦目のコートジボワール戦は配信映像を我が家のテレビに映し出して観た。小さい画面のテレビでは私の弱い目が疲れてしまうので、私たち夫婦のリヴィングのテレビは55型の大きめの画面のものにしている。
配信サーヴィスを初めて利用して気付いたのだが、私にとっての配信映像の最大の利点は途中で止められること(もちろん初見では早送りは絶対にしない)。要するに録画映像と一緒だ。生中継だと45分観戦したあと私の目の疲れを十分に癒しきれないうちに後半が始まってしまい、結果的に私の目が相当疲弊してしまうことがままある。だが配信だとハーフタイムに入ったら好きなだけ止めておけるので、目をゆっくり休ませてから後半をおもむろに観始めることができる。これは視力の衰えた私にとっては実に有難いことだ。観る前にうっかり結果を知ってしまわないよう、気をつけないとならないのがアレだが。

ノルウェー代表チームの戦いぶりは、出場試合全て得点しているハーランド選手の活躍はもちろんだが、他の選手の活躍も皆際立っており、チーム全体の充実ぶりは確かにすごい。神出鬼没に動き回るウーデゴール選手Martin Ødegaardやベルグ(バリー)選手Patrick Bergら司令塔的ミッドフィルダーの活躍ぶり。キーパーやディフェンス陣も北欧チームらしい堅守を誇る。ハーランド選手にしても前線に張り付くばかりではなく、味方のピンチにはきちんと戻ってきて愚直にディフェンスに徹する「チームの一員」ぶりを発揮しており、実に好感が持てる。
それなのに、28年ぶりの本大会出場の故か、チーム全体のプレイスタイルは高度なのにどこか素朴で愚直な雰囲気があるのも微笑ましい。ノルウェーサポーターの一体感のある応援スタイル「ヴァイキング・ロウ」(バイキング・ロー)も、他の国のサポーターには見られない独特な感じでなんとも好感が持てる。既に今大会の名物と化しているようだ。勝利すると試合後に選手とサポーターが一緒にヴァイキング・ロウをやるのが、見ていて本当に微笑ましいよね。
並行して観ていた日本代表チームの方は、周知の通り大変残念なことに決勝トーナメントの1戦目でブラジル代表に惜しくも敗れてしまった。そのブラジルと日本時間の明日未明に対戦するのが、我らがノルウェー代表チームである。
図らずも日本の仇を取りに行く形になったが、実はノルウェーはブラジルには過去の4対戦で負けたことがないという、かなり珍しい実績を持っているらしい。もちろんブラジルは難敵なのでハイレヴェルの一戦になるだろうけれども、日本戦で露呈したブラジル代表の守りの緩さにはつけ入るスキがかなりありそう。是非ともノルウェー代表には明日もブラジルに勝って、フィールドにあの「ヴァイキング・ロウ」を響かせてほしいものだ。

(写真は全て、2009年7月にノルウェー各地にて撮影)