お彼岸前に金木犀とは、ずいぶんと早いですね

 

 雨つづきの鬱々とした日々のあとに、久々にすっきりと青空が広がった昨日の朝。

 街中に、金木犀の花の香りが、一斉に満ち溢れた。

 例年と同じように、全く思いがけず、ひそかに待ち構えていたかのように、一斉に。

 この日記で何度も繰り返し書いてきたけれども(例えば2005年10月4日の日記2009年10月7日の日記を参照)、金木犀は私が最も好きな花の香りだ。この季節は街中に満ち溢れるこの香りのおかげで、いわれもなく幸福な気持ちに包まれる。

 そもそも生まれ育った実家の庭に立派な金木犀が葉を広げていたことが、私にとって金木犀の原体験だった。だから幼少の頃から、毎年9月の下旬からしばらくはこの芳しい香りに包まれて過ごすのが当たり前で、そんな日々を年ごとに繰り返すうちに、金木犀の芳香は私の中に特別なものとして刷り込まれていったようだ。

 そんなわけで、生まれ育った実家を5年前に建て替えた時にも、当然のように庭の一角に金木犀の樹を植えて、以後毎年この季節には芳しい芳香を振りまいてもらっている。もちろん今年も、近所の他のたくさんの金木犀の樹々と「せーの」と示し合わせたかのように、昨日から一斉にオレンジの花を開いて香り出したのだった(冒頭の写真)。

 にしても、今年の金木犀は開花が早い気がする。だいたい金木犀が花開くのは9月下旬のお彼岸が過ぎてから、2010年代以降残暑が長引くようになってきてからは10月にようやく、というイメージだった。それが今年は、まだお彼岸にならないうちの開花だ。

 おそらくここ数年の厳しい残暑は何処へやら、このところの異例なほどのどんより曇り&雨続きで、例年になく気温が低い日が続いたのが原因だろうか。この気候では、金木犀が秋が深まったと思い込んだとしても無理はない。幸いにも昨日今日と、ここしばらくの鬱とした曇天を吹き払う青空が清々しい日和が続いたので、街中に馥郁たる香りが溢れ出るのには、そしてそれを楽しむには、実にうってつけの2日間であった。

 この週末は台風の接近で荒天が予想されているが、金木犀にはじっと耐えてなんとか咲いたばかりの花を散らさずに乗り越えてもらい、台風一過にはまたあの芳しい香りを街中に溢れさせてほしいものだ。

羽田空港の夕景

 

 10日ほど前に、私の妻と二人で羽田空港に行った。

 飛行機に乗るとか見送り出迎えなどの「正当な」理由で行ったのではなく、羽田空港という施設を純粋に楽しむために、である。

 

 

 空港の楽しみのハイライトは、もちろん展望デッキからの眺望だ。

 夕方から夜にかけての時間が、最も美しい。

 この日は第1旅客ターミナル屋上の展望デッキからの眺めを堪能。

 沈みゆく夕陽に赤々と染め上げられた滑走路に飛行機が次々と発着するのを、のんびりと見る。

 いつまでも、飽きずに眺めていられる。

 

 

 この8月は小さな異変と小さな挫折があり、あれやこれやとほどほどに慌ただしい日々の連続に気が滅入ることも続いて、心の中の「風通し」をしておきたかった気分。急に思いついて訪れたのだった。

 何しろ都内各所から比較的短時間で来られて、気軽に安価に非日常感と旅気分とが味わえる施設である。

 少なくともこの「東京国際空港」=羽田空港に関していうなら、2010年の新しい国際線旅客ターミナルビルの本格開業以降の発展によって、最近はすっかりある種の「旅をテーマにしたレジャーランド」化した感があるなあ、とつくづく思う。

 つまりは、「来るだけで楽しい場所」ということである。

 

 

 やがて夜のとばりが降りてきて、滑走路のあちこちに照明が点り始める。

 空港の夕景も素晴らしいが、夜景はまた格別である。

 小学生の時に近しい人の見送りで初めて来て以来、「空港の夜景」は私にとって憧れのこもった特別な場所であり続けている。

 未来のどこかに存在する、おしゃれで素敵で上質な「より良き向こうの世界」の象徴だった。

 

 

大いなる航海の終わり

 

 大いなる航海は終わりを迎え、

 勇者たちは今、家路につく。

 ワールドカップ(W杯)2026北中米大会・決勝トーナメントの準々決勝、ノルウェー代表チームはイングランド代表に延長戦の末、惜敗。

 まさに「惜しい」試合でした。どちらに転んでもおかしくない、延長戦までもつれ込んでの激闘。前回の日記に書いたように、私の本音は両方とも応援だったけれども、やっぱりノルウェーの敗北は残念だったな〜。それでも負けてもなお、試合後のピッチに佇んで相手と健闘を讃え合うノルウェー代表の面々には、ベストを尽くした果てのある意味清々しい風情すら漂っており、それがすごく印象に残った。まさしくgood looser、「よき敗者に勝るものなし」だ。

 ストライカーのアーリング・ハーランド選手Erling Braut Hålandがコンディション不良で、特に後半以降の動きが乏しかったのが試合の趨勢に大きく影響したのは間違いない。これまでW杯の数試合を観てきた限りだが、ハーランド選手はどんなに守備陣に阻まれても自ら動いてパスを受ける立ち位置を見出し、決定機を作り出してきたのが凄さだったように思っていた。なので、後半の終盤以降ほとんど足が止まってしまったのは、素人目にも明らかに「異変」としか思えなかった。

 それでも、試合後のインタビューでは体調不良だったのは認めつつも、ピッチコンディションの悪さは他の皆にも同じだから言い訳はしないと実に謙虚。試合後も長くスタジアムにとどまってファンサービスに徹するなど、自らの「役割」をきちんと果たす姿は実に清々しかった。実際には彼自身へのファウルの判定でせっかくの勝ち越しゴールが取り消されてしまった場面もあったのに、そのことで彼を批判する声はほとんど聞かれず、いかに世界中でハーランド人気が高まっているかの証左であろう。

 その思いは本国ノルウェーの人々も同じだったようで、インスタグラムを見ると、人々は敗戦に落胆することなく深夜まで首都オスロの町はお祭り騒ぎだったようだし、代表選手が帰国してオスロに凱旋した際には、王宮前広場から目抜き通りのカール・ヨハン通りまで10万人の人が埋め尽くして歓呼の声を送ったという。北欧の小さな国がここまで世界に向けて存在感を示すことができたのが、皆素直に嬉しいのだ。その素朴な喜びが見ている我々にもよく伝わってきて、こっちまで嬉しくなる。

 私自身も、今回のW杯でのノルウェー代表の活躍ぶりを見ているうちに、しばらく沈静化していた自分の中のノルウェー愛が再燃して、久々にノルウェーに行きたい気持ちがふつふつと湧き立ってきた。私個人は過去に4回行ったことのある国だが、最後に訪れたのは2009年。17年前だ。その間にあの国で変わったこと、変わらないこと、そしてまだ見たことのないものを見届けてみたくなったぞ。そのことだけでもノルウェー代表チームには深く感謝の念が絶えない。いつ行こうかな〜。

 

 

 締めくくりに、追記をいくつか。

 ひとつは、前回の日記で言及した、ノルウェーサポーター発祥の独特な応援スタイル「ヴァイキング・ロウ」(バイキング・ロー)。もうすっかり今回のW杯の最大の話題のひとつになった感があるが、その誕生秘話がFIFAの公式サイトに掲載されています(以下のリンク先参照)。

 

・舟を漕ぐ数千人:世界を席巻するノルウェーの応援「バイキング・ロウ」誕生秘話:

https://www.fifa.com/ja/tournaments/mens/worldcup/canadamexicousa2026/articles/norway-fans-viking-row-ja

 

 ノルウェー代表がブラジル代表を撃破した、そのピッチを囲むスタンドを埋め尽くしたブラジルサポーターたちの「黄色い海」の中で、赤きヴァイキングたちが見事に船を漕ぎ切ったことも、永く記憶されるべきだろうと思う。

 

 

 もうひとつは、W杯以前の話であるが、ハーランド選手が自身が育ったノルウェー南西部の小さな村ブリンBryneに、父親のアルフ氏とともに2000万円以上で購入した希少な古書を寄贈したことが話題になっていた。このことを「NewsPicks」(ニューズピックス)にて、北欧中世史を専門としている歴史学者の小澤実さんが詳細に解説しており、実に興味深い。

 

newspicks.com

 

 最初に聞いた際には、書籍の中身は歴史家スノッリ・ストゥルルソンSnorri Sturlusonが書いた「貴重なヴァイキング叙事詩」と報じられており、「それってかの有名な『ヘイムスクリングラ』じゃないの!?」と大興奮した私だった(笑)。アイスランド出身のストゥルルソンが執筆・編纂してノルウェー宮廷に献呈した、ノルウェーの代々の王たちの列伝が『ヘイムスクリングラ』"heimskringla"であり、北欧中世文学の精華たる「サガ」(サーガ)Sagaの代表作のひとつとしてつとに名高い。「さすがハーランドくん、分かってるじゃん」とニヤリとしたものだ(笑)。

 

 

 この小澤さんの詳細な解説を読むと、実際に寄贈した本は『ヘイムスクリングラ』だけでなく、それ以後のノルウェーの歴史の記述を含む長大な歴史書で、手書きの写本ではなく16世紀に印刷された「初期印刷本」だったらしい(もちろん、それでも十分に貴重だが)。小澤さんはそこから語り起こし、ノルウェーとイングランドの関わりの歴史や、現在ノルウェーを含む北欧諸国でヴァイキング文化の研究が盛んに行われていることまで言及されている。実に興味深い内容だ。

 中でも、オスロのヴァイキング船博物館が改装・拡大され、2027年11月に「ヴァイキング時代博物館」Museum of the Viking Ageとして新たに開館するという情報には大注目。この博物館には、小澤さん同様私自身もオスロに行くたびに必ず行っており、ヴァイキング文化を最もよく味わえる場所のひとつだ。だから、そこが総合的にヴァイキング文化を展示する博物館として拡張リニューアルするのは、大いに楽しみだ。ノルウェーに行くのはこのリニューアル時期に合わせるべきかも。

 

 

 最後に、2026年7月8日の日記「CONGRATS, NORGE!!!」が、同年7月10日に「はてなブログ」トップページの「きょうのはてなブログ」欄で紹介されました。しかもトップ掲載で(下の画像)。世間で話題になっていることをタイムリーに取り上げた形になっていたからでしょうか。

 

 

studio-unicorn.hatenablog.com

 

 この日記の記事が「きょうのはてなブログ」欄で紹介されたのは、2025年12月14日の日記2026年4月30日の日記に続き、これで3度目になります。きっと一般的なはてなユーザーの方の掲載頻度は、もっともっと多いのではないかと思います。そんな数多くのブログを見て回る中で、この拙い日記にも寄ってくださっているはてなのスタッフの方々の労力には、ただただ頭が下がるばかりです。またしてもこのようにご紹介くださったはてなの皆様に、厚く御礼を申し上げます。

 そして、全2回同様この日記をご訪問くださった方々にも、この場を借りて御礼申し上げます。トップページ掲載当日の7月10日の「Unicorn Diary」へのアクセス数は263と、自分史上最高の数字でした(汗)。中には、応援のスターを残したり、私の日記「Unicorn Diary」の読者になってくださったはてなユーザーの方々もいらして、皆様に感謝するばかり。以前も書きましたが、私の目の力がとても弱いために、全ての皆様へ御礼とお返しのご訪問ができないことをお詫び申し上げます。

 

 

 しかし、数日かけてこの日記を書いているうちに、W杯も準決勝が終わって残り少しになってしまった。宴の終わりが見えてきて、少々寂しい気持ちもある。

(写真は全て、2009年7月にノルウェー各地にて撮影)

開かれた箱

 

 あーあーあ。

 とうとう「あちゃー」が、始まっちゃった気が。

 だから、あのとき「さすがに今度ばかりは、パンドラの箱が開いてしまった」といったのだけれど。

 小さな綻びから、やがて大きな土砂崩れへ。

 それを防ぐには、この国の人々が「自分の頭で考える」ことしかないのだけれど。

 「考えるのがめんどくさい」という人ばかりになると、もう「終わりが近い」というしかない気がします。

CONGRATS, NORGE!!!

 

 YEAAAAAAAAAAHHH!!!

 HIP HIP HURAHHHHHHHH!!!

 CONGRATS, NORGE!!!

 ワールドカップ(W杯)2026北中米大会・決勝トーナメント、ノルウェー代表チームがブラジルを撃破!

 本当におめでとう!

 なんかブラジルがあまり勝ちそうにない雰囲気だったので「もしかしたら」と期待していたのだが、ノルウェー代表選手たちの素晴らしいチームプレイとGKニーラン選手Ørjan Nylandの好セーブに支えられ、「怪物」アーリング・ハーランド選手Erling Braut Hålandの見事な2ゴールが花開いて完勝。サッカーにあまり詳しくない私でも、多分このチームの一番いい形が見事に結実した試合だったように感じる。「素晴らしい」の一言です。

 前回の日記で言及したように、ノルウェーは公式戦でブラジルが勝ったことのない唯一の国だそうだ。今回の試合結果はその「記録」をさらに伸ばしたことになる。それでもやっぱり「王国」と呼ばれるブラジルに完勝したことは、28年ぶりに自国代表が本大会に出ただけで嬉しかったはずのノルウェーの人々にとっては、どの他の国に勝ったことよりもひときわ大きい、信じられないほどの「快挙」だったに違いない。

 

 

 ずっと放置していたインスタグラムを久々に見ると、ほとんど「国を挙げて」歓喜しているといっていいほど喜びを爆発させているノルウェーの人々の姿が次々と映し出されて、そのビッグウェーブが伝わってくる。人々のその素朴な喜び方は、見ているこちらまで微笑ましくなる。

 首都オスロの広場では、何千人という人々が集まって一斉に例の「ヴァイキング・ロウ」を披露する映像も。この「ヴァイキング・ロウ」はノルウェーサポーターが考案したそうだが、誰もが簡単に参加できて多くの人ががひとつにまとまれるし、ノルウェーの歴史的アイデンティティが生かされているという点でも、とても秀逸なパフォーマンスだと思う。インスタグラムでは、ノルウェーの王族はもちろん、ノルウェーの国会議員たちが議事堂で、あるいは施設で暮らすシニアたちまでもがこの「ヴァイキング・ロウ」を披露する映像が流れてきて、ホント国全体で素朴に盛り上がっているなあと。

 この国では、ある意味とても「健全」な愛国心が、人々の中に根付いていることもあるだろう。また、喜ばしいことを素直に喜んでいて、それを素直に表現しているその「素朴さ」が羨ましい、とさえも感じる。仮に日本代表がブラジルに勝ったとしたら、こんなに素直に素朴に盛り上がれただろうか。いろんな意味で「進んだ」国の人々がとうに置き去りにしてしまった何か大切なものが、まだこの国では充分に「生きて」いるというか。だから見ているこっちも嬉しいし、ノルウェーの国民でなくても応援したくなる気持ちが湧いてくるのかもしれない。

 

 

 にしても……。

 準々決勝の相手はイングランドか……。

 この組み合わせは実に悩ましい。

 イングランドといえば、私が大学時代に交換留学して一年弱暮らした、まさにその現地。英国とイングランドの名前は、数々の思い出とともに常の私のそばにある。その縁で、これまでのW杯ではイングランド代表チームを応援することが多かった。私の本音は両方とも勝ってほしい気持ちでいっぱいだ。

 しかしこれは勝負事。どちらかが勝たねば次に進まない。

 であれば、今回は数十年ぶりの快挙をさらに推し進めて未踏の道を歩む、というより未開の大海原を漕ぎ進めている「ヴァイキング軍団」の方にエールを送ろうか。いずれにせよ、さらにハイレヴェルな試合になりそうで楽しみです。

 

(写真は全て、2009年7月14日撮影。ノルウェー・ボルグンBorgundの木造教会)

ヴァイキング・ロウが響きわたる

 

 幼少の頃からスポーツ、特に球技が苦手だった私は、スポーツ観戦もあまり積極的にすることがないまま成長し、今でもほとんど観ることはない。しかし男子サッカーの国際的な大会、より正確にいうとFIFAワールドカップ(W杯)だけは例外で、開催されると人並みに(?)何試合かテレビで観戦することが多い(欧州選手権も好んで観たい大会なのだが、地上波で放映される機会がないのであまり観ていないなあ。サブスクは基本的にやらないし)。

 それは、大学時代に交換留学で英国に一年間暮らした際の経験が大きかったように思う。ちょうど1990年イタリア大会が開かれたときでその熱狂に間近で立ち会い、現地英国の、そしてヨーロッパ中の人々が、いかにこのサッカーの国際大会を重大に特別に捉えているかを肌で強く実感したのだ。今でもサッカーの国際試合をテレビで観ると、あの頃の熱気が戻ってくるような感覚を覚えることがある。

 とはいいながら、W杯も4年毎の開催の度に徐々に熱量が下がってきており、今年(2026年)の北中米大会に対しても、開催前はまあ日本代表が頑張ってほしいなあ、くらいの低めの熱量だった。

 ところが開会を控えたある日、何気なく今回のW杯の出場国を眺めていて、ある国の代表チームの名前があることに気がついた。

 えっ、ノルウェー!?

 なんと、私の大好きな国ノルウェーの代表チームが出場するの!?

 ものすごく久しぶりじゃない???

 調べたら1998年のフランス大会(日本代表が初めて本大会に出たときだ)以来、実に28年ぶり(7大会ぶり)の出場らしい。しかも今回からの出場国の増加に伴って運よく出場できたというレヴェルではなく、「怪物」と呼ばれるほどすごい若手フォワードのアーリング・ハーランド(アーリン・ホーラン)選手Erling Braut Håland(Haaland)を擁して、FIFAランキング31位ながら優勝も狙えるほど充実したチームだとか。

 これを知って、一気に今回のW杯への熱量が増大した(笑)。日本代表チームももちろん応援するつもりだったが、開会前から私にとって一番の注目はこのノルウェー代表だった。

 

 

 そもそもは北欧神話とサーガへの興味から入った(だからスウェーデンでもデンマークでもフィンランドでもなかった)のだが、高校生の頃から私の中でノルウェーはアイスランドとともにヨーロッパの中で、いや世界の国々の中で、常に特別な位置にある国だった。大学では西洋美術史を学ぶ中で、ノルウェーに多く残る組紐文様が特徴的な中世の装飾美術やヴァイキング文化に大いに惹かれた。その大学時代に交換留学で英国に滞在した一年間では、休暇中に西ヨーロッパをあちこち回るつもりだったのだが、当然のようにノルウェーに真っ先に行くと決めていた。

 ノルウェーには、その留学中の訪問と勤め仕事時代の出張も含めて、今までに合計4回行っている。留学の一年間滞在とその後5回旅行した英国と、留学時の訪問を含めて6回旅したイタリアに次いで多く、その2国と同じくらい強い愛着を抱いている国だ。ノルウェーに行くたびに、フィヨルドに代表される雄大さと静謐さの両面を併せ持つ大自然の風景や、穏やかで心温まる気遣いのこもった人々とのふれあい、ロマネスク時代の特異な木造教会をはじめとする建築や美術の数々に魅せられてきた。

 

 

 ちなみに、私が毎年騒いでいる(笑)自分の誕生日とノルウェーの最も重要な祝日「憲法記念日」、つまりノルウェーの国の誕生日とが同じ5月17日だという「偶然の一致」は、けっこう後になって初めて知った。この日記を遡って見ると、どうやら2009年ごろだったようだ(2009年5月17日の日記参照)。この年の7月には私たち夫婦は当のノルウェーに旅行しており、旅先で出会った現地のノルウェー人に私の誕生日が5月17日だと話すと、皆一様にまず目を丸くして驚き、それからこの上ない笑顔を見せてくれたのを思い出す。

 英国やイタリアほど日本ではメジャーではない国なので、日本の日常の暮らしの中でノルウェーやノルウェー人に関係した情報に接する機会はそれほど多くない。却ってそのことが、私にとってノルウェー情報に接した際の熱意の度合いを強めている気がする。今回のW杯のことがまさにそうだ。

 そんな経緯があって、今回のW杯はグループリーグ2戦目からノルウェー代表チームが出る試合をテレビで観てきた。我が家のテレビは地上波だけで有料のサブスクも一切やっておらず、2戦目のセネガル戦は朝の支度や洗い物などしながら観戦したが、その後ちょっと事情があってDAZN(ダズーン)の配信に1か月だけ登録したので、以後の3戦目(フランス戦)と決勝トーナメント1戦目のコートジボワール戦は配信映像を我が家のテレビに映し出して観た。小さい画面のテレビでは私の弱い目が疲れてしまうので、私たち夫婦のリヴィングのテレビは55型の大きめの画面のものにしている。

 配信サーヴィスを初めて利用して気付いたのだが、私にとっての配信映像の最大の利点は途中で止められること(もちろん初見では早送りは絶対にしない)。要するに録画映像と一緒だ。生中継だと45分観戦したあと私の目の疲れを十分に癒しきれないうちに後半が始まってしまい、結果的に私の目が相当疲弊してしまうことがままある。だが配信だとハーフタイムに入ったら好きなだけ止めておけるので、目をゆっくり休ませてから後半をおもむろに観始めることができる。これは視力の衰えた私にとっては実に有難いことだ。観る前にうっかり結果を知ってしまわないよう、気をつけないとならないのがアレだが。

 

 

 ノルウェー代表チームの戦いぶりは、出場試合全て得点しているハーランド選手の活躍はもちろんだが、他の選手の活躍も皆際立っており、チーム全体の充実ぶりは確かにすごい。神出鬼没に動き回るウーデゴール選手Martin Ødegaardやベルグ(バリー)選手Patrick Bergら司令塔的ミッドフィルダーの活躍ぶり。キーパーやディフェンス陣も北欧チームらしい堅守を誇る。ハーランド選手にしても前線に張り付くばかりではなく、味方のピンチにはきちんと戻ってきて愚直にディフェンスに徹する「チームの一員」ぶりを発揮しており、実に好感が持てる。

 それなのに、28年ぶりの本大会出場の故か、チーム全体のプレイスタイルは高度なのにどこか素朴で愚直な雰囲気があるのも微笑ましい。ノルウェーサポーターの一体感のある応援スタイル「ヴァイキング・ロウ」(バイキング・ロー)も、他の国のサポーターには見られない独特な感じでなんとも好感が持てる。既に今大会の名物と化しているようだ。勝利すると試合後に選手とサポーターが一緒にヴァイキング・ロウをやるのが、見ていて本当に微笑ましいよね。

 並行して観ていた日本代表チームの方は、周知の通り大変残念なことに決勝トーナメントの1戦目でブラジル代表に惜しくも敗れてしまった。そのブラジルと日本時間の明日未明に対戦するのが、我らがノルウェー代表チームである。

 図らずも日本の仇を取りに行く形になったが、実はノルウェーはブラジルには過去の4対戦で負けたことがないという、かなり珍しい実績を持っているらしい。もちろんブラジルは難敵なのでハイレヴェルの一戦になるだろうけれども、日本戦で露呈したブラジル代表の守りの緩さにはつけ入るスキがかなりありそう。是非ともノルウェー代表には明日もブラジルに勝って、フィールドにあの「ヴァイキング・ロウ」を響かせてほしいものだ。

 

(写真は全て、2009年7月にノルウェー各地にて撮影)

 

イベント続き&展覧会目白押し

 

 今年(2026年)5月に公開された映画『プラダを着た悪魔2』"The Devil Wears Prada 2"の興行収入が、たいへん好調だと聞く。

 2006年公開の正篇たる『プラダを着た悪魔』"The Devil Wears Prada"が大好きだった私自身が、この20年ぶりの続編の公開には不安しか感じていなかったのは、2026年4月19日の日記に書いた通り。だが、世間的な興行は大いに成功したようなので、ディズニーのお偉方もさぞホッとしていることだろう。しかも、公開後しばらくは平日昼間の稼働率が高かったらしく、「ファミリー層」でくくられない形での30代〜50代女性の動員が非常に良いそうだ。ひと昔前の言い方でいう「F2層」からファミリー要素を抜いた観客たち、という感じだろうか。この層の観客はこれまでのディズニーフランチャイズ映画のラインアップではいまひとつ浸透が薄く、ディズニーにとっては喉から手が出るほど欲しい層だったはず。なので、そこをターゲットにして『プラダ〜』を敢えて掘り起こしたディズニーの狙いは、見事に当たったというべきか。

 そして今更ながらに、私がこの続編の不安材料のひとつとして挙げた、不利に思われる「2」をわざわざつけた理由も、ディズニーのその狙いのゆえだったかと気づく。

 以前書いた通りに私は、20年も間の空いた続編のタイトルに「2」をつけるのはマイナスにしか作用しないのではと思い込んでいた(2026年4月19日の日記参照)。しかし、その「20年前にあのおしゃれで楽しい映画を観た経験のある」女性層に思い出してもらう目的のためなら、これは大いに「アリ」だったのだ。だから、この敢えての「2」命名は、映画の詳細な中身は(もしかしたら大筋さえも)憶えていなかったとしても、「そういえばあんな映画があったっけ。あの映画の「2」ならもう一回観たいかも」と注意喚起して振り向かせるための、フックとして作用するのを狙ったワケだ。そうか〜、そういうことだったのか〜。さすがディズニー、とことん商売人である。ひとつ賢くなりました(笑)。

 

 

 とはいえ、世間的な評判や他人の評価は正直どうでもよくて(参考にすることはありうるけど)、私自身が実際にこの続編を観ないことには、そもそもの「私の」不安は解消しようもない。

 ない、のだけれど……。

 まだ観てません(笑)。

 何やってんだ自分(笑)。

 というのも、今年の5月は私たちの誕生日月間に加えてヒマな私たち夫婦には極めて珍しいことにイベント続きで、その予定詰まりの日々にすっかりナマっていた私の身体がついてゆけず、ひと月ずっと「イベントか不調か」みたいになってしまいまして。

 さらに6月は、私にとって「終了が迫っており見逃してはいけない重要な展覧会」が目白押し状態だったのです。東京ステーションギャラリーのカール・ヴァルザー展、世田谷美術館の「田中信太郎――意味から遠く離れて」展にミュージアム・コレクション(収蔵品展)の写真展「武蔵野・再考」(一日では両方観きれなかったので別の日にもう一度行きました)、TOTOギャラリー・間(ま)の「山田紗子展 parallel tunes」、そして東京都美術館の「アンドリュー・ワイエス展」。あまりに盛りだくさんすぎて(私にとっては、です)、4月に行った国立西洋美術館のチュルリョーニス展をもう一度観たいと強く思ったのだが会期終了の6月14日までに行くことができず。すごく残念だった〜。いっそのことリトアニアに観に行こうかしらん(笑)。

 

 

 念のために言い訳しておくと、この程度なら若い人や目の丈夫な人であれば大したことないでしょう。でも、これでも視力が衰えた私には十分に盛りだくさんなのです。もともと近視と乱視と斜視が非常に強くものすごく疲れやすかった私の目が、2年前の網膜剥離の緊急手術以来さらに弱くなっておりまして(もちろん加齢もある)。そして私は作品ひとつひとつをかなりじっくり観て回るために、通常規模の企画展ひとつを観るのに2時間以上かかってしまうのです。ということで6月は、ひとつ展覧会を観てはしばらく目をじっくり休ませて……の繰り返しになってしまいました。

 さらに6月下旬には、もうひとつ別の目を使う事態が発生してしまい(これも近日中に書きますね。ノルウェー万歳)、映画を観る予定を差し込むことが全然できませんでした(泣)。マンダロリアンとかハムネットとかも観たかったのですが。当然のことながら、目が疲れてしまってこの日記を書く余力もなく(涙)。

 夏本番を迎えんとするこの時季、話題の新作の公開が続々と続いているようですが、『プラダ2』まだやっていますかねえ(笑)。

 

(写真は全て2026年6月24日に、東京・上野恩賜公園にて撮影)