世田谷美術館にて

studio_unicorn20060528

 昼に雨は止み、天候は午後から徐々に回復の兆し。おかげで、今日は自転車で出かけることができる。よかったよかった。
 というわけで、妻と自転車で世田谷美術館へ向かう。自転車を走らせるうちに、雲の間から晴れ間が覗いてきた。
 美術館に着くと、まずは区民ギャラリーへ。妻の知人が写真を出展している「東京パノラマウォーク写真展」を観るためだ。どうも老若男女集まって、東京を歩きながら、写真を撮ったり撮らなかったり、美味しいものを食べたりする緩やかな集団らしい。そのメンバー(?)たちが、めいめい思い思いの写真を何点かずつ出展しているようだ。特に統一したテーマがないので、東京だけでなく外国の風景あり、花の写真あり、家族のスナップありと、ヴァラエティに富んでいる。メディアも、カラーありモノクロあり、デジタルあり銀塩ありと、実に多種多様。それぞれの撮影者の、さまざまな視点や対象の捉え方がこれまたヴァラエティ豊かで、本当に面白い。楽しみながら観ることができた。
 こういうのを見るとすごく思うのは、写真はデジタルだ、いや銀塩だとかいう手段のみに終始した議論が、如何に不毛なものであるか、ということ。私はアナログの銀塩写真にこだわって写真を撮り続ける人は素晴らしいと思うし、デジタルの特性を生かして作品を作り続けている人もまた素晴らしいと思う。でも、それらはその人それぞれの経験や考え方に基づいた姿勢であって、それが短絡的に、銀塩だけが正しくてデジタルはダメだとか、その逆だとかということには、絶対に直結しないと思う。その人次第で手段はさまざまなはず。要は、手段の如何を問わず、出来上がった作品がいいかどうか、好きかどうか、それが肝心だと思うのだが。
現代木版画技法―誰でもできるプロの技 (別冊版画芸術)
 次に、メインギャラリーに行き、「吹田文明展〜華麗なる木版画の世界」を観る*1。先日、タダ券を手に入れたのだ。どうも木版画というと、小学校の図工の時間に、彫刻刀で版木を彫り、バレンでこすって紙に刷ったアレを連想してしまうのだが、ここに展示されている吹田さんの作品はそんなレベルじゃない(当たり前か)。とても木版画とは思えないほどに複雑で色鮮やかな作品が次々と展示されている。こちらもとても楽しめた。まるで宇宙空間のような、青を基調とした大判の作品群が特に気に入った。
 ただ作品作りをしていただけじゃない。吹田さんはもともと小学校の図工の教師だっただけに、小学校の図工の授業に版画を導入するのに尽力した方なのだそうだ。我々が小学校で版画をするようになったのも、この人のおかげなのだなあ。

(写真は、雨上がりの水たまりに映った青空。世田谷美術館前の広場にて)

*1:この人の名前も、つい「すいた ぶんめい」と読んでしまうのだが、「ふきた ふみあき」と読むのが正しい。前に観た堂本尚郎さん(2006年2月5日の日記参照)といいこの人といい、世田谷美術館には読むのが難しい名前の作家がよく登場するなあ。