旅の物語

studio_unicorn20070627

まひるの月を追いかけて (文春文庫)
 先日購入した(5月15日の日記参照)恩田陸さんの小説「まひるの月を追いかけて」を、本日読了。
 いや〜、面白かった。読み進むうちに、相変わらずの恩田マジックにかかってしまって、最後まで読まずにはおかない気持ちになってしまう。物語の醍醐味と「恩田ワールド」らしさを堪能した一冊だった。
 この小説は、ほぼ全編、奈良と明日香を旅する物語である。すべてのものごとが、旅の途上で起こる。すっかり恩田ワールドの虜な私だが(2006年2月20日の日記参照)、恩田さんの小説は"旅"をテーマにしたものが多いような気がする。たまたま、今まで私が読んだ恩田さんの小説が旅ものばかりだった、ということなのかもしれないが。かの「夜のピクニック」だって、言うなれば"旅"だったし、大作「黒と茶の幻想」は、旅先が「Y島」と記されているが、誰が読んでも屋久島だとわかるし。怪作「ユージニア」も、舞台は「K市」と記されているが、読めば誰だって金沢だと気づく。そして、私が一番好きな、壮大な大作「ネクロポリス」も、架空ではあるものの、英国と日本を合わせたような国V.ファーを舞台に、"アナザー・ヒル"への旅が描かれるし。
 思うに、恩田さんは"旅"というものの非日常性を、非常にうまく自身の小説の中で生かしているような気がする。それがまた、恩田小説の大きな魅力のひとつとなっているのだろう。

(写真は6月16日、北軽井沢にて撮影)