英国3日目・Broadway Tower

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 チッピング・カムデンChipping Campdenを出て、次の滞在地アッパー・スローターUpper Slaughterに向かう前に、タクシーの運転手さんにお願いして、Chipping Campdenの近くの村ブロードウェイBroadwayにある、ブロードウェイ・タワーBroadway Towerへ寄ってもらった。
 以前、このBroadway Towerが丘陵地帯に屹立する写真を見てから、一度行ってみたいと思っていたのだ。何もないところに突然、塔がぽつんと立っているのだから、すごく不思議だ。なんのためにこの塔が建てられたのかと運転手のおばさんに聞いてみると、18世紀に時の領主さんが「さしたる目的もなく」、つまり楽しみのためだけに建てたのだそうだ。うーん贅沢というか、愛すべき無駄というか。
 果たして到着すると、確かになだらかな丘陵の平原に、塔がぽつんと立っている(写真)。入場料を払って頂上まで上る。そこからの眺めは素晴らしいのひと言。コッツウォルズの素晴らしい田園風景が、四方に雄大に広がっている。昨日のDover's Hill以上だ。またChipping Campdenに来る機会があったら、ぜひここまでウォーキングしてみたい(往復で丸一日かかりそうだが……)。

英国3日目・Slaughters to Borton-on-the-Water

 さてアッパー・スローターUpper Slaughterに到着。本当に何もない、静かな英国の田舎村だ。家並みが素晴らしい。
 例によって、Public Footpathを歩いて、すぐ隣のロウワー・スローターLower Slaughterへウォーキングする。今日も気温が高く、こちらにしてはとても暑い日だ。15分もかからずにLower Slaughterに到着。こちらは、Upper Slaughterよりは観光客の数も多く、店もちらほらあって、ちょっと開けた感じがする。のんびりした雰囲気が漂っているのは一緒だが。
 さらに15分ほどかけて、隣のボートン・オン・ザ・ウォーターBorton-on-the-Waterへ行ってみる。こちらはCotswoldsの中でも有数の観光地で(なんでも「コッツウォルズのヴェネツイア」と呼ばれているらしい)、観光客とお店がわんさかと溢れかえっていた。いや、もちろん、ここだって水辺の風情が味わえるコッツウォルズのいい田舎町なのだろうが、Slaughtersの静かな佇まいを見てしまった身としては、やたらと観光ずれして見えてしまって、正直あまり楽しめなかった。残念。

英国3日目・Lords of the Manor

 Upper Slaughterで宿泊したホテルは、かのローズ・オブ・ザ・マナーLords of the Manor。数あるマナー・ハウス(昔の領主の家などを改装してホテルにしたもの)の中でも伝統と格式を持つホテルとして、特に日本人には有名である。
 実はホテルを決めるときに、せっかくだから(両親もいるし)マナー・ハウスに泊まりたいと思い、かつて編集者をやっていた特権で、英国のマナー・ハウスの本を作った編集者の方に相談をしたところ、やっぱりハズレがないのがLords of the Manorだとアドヴァイスを受けていたのだ。
 実際にチェックインしてみると、クラシカルで甘すぎない程度に可愛らしい内装の客室はとても素敵で、バスルームがとても広いのが嬉しい。洗面台も2つ設えられている。客室にさりげなくミネラルウォーターとシェリー酒が用意されているのも心憎い。
 さらに、ここの裏庭も素敵に整えられ、数々の花が咲き乱れるイングリッシュ・ガーデンになっていて、とても良いのだが、なんといっても素晴らしいのは、ホテルの前に広々と広がっている芝生の前庭。テーブルと椅子が点々と配置され、ここで寛ぎながらアフタヌーンティーを楽しめるのだ。この芝生でお茶を飲みながら、風の音、木々の囁きに耳を傾け、時の移ろいを感じながらリラックスしているのは、なんとも心地よい。この前庭でくつろぎの時間を持てることこそ、このマナー・ハウスに泊まる一番の贅沢なのかもしれない。
 ホテルのレストランでの夕食も素晴らしかった。マナー・ハウスの通例として、ラウンジで食前酒をすすりながらメニューを決め、食卓の用意が整ったとの案内を受けてレストランへ赴く。そしてくつろぎのディナー・タイムだ。やはり日本人が多く泊まるためか、食事の量は多すぎず、我々日本人の小さい胃袋でも食べきれる量になっているところに、ホテルの心遣いを感じる。どんなリクエストにも笑顔で聴いてくれるあたり、さすが一流のホテルは従業員の質が高いな、としみじみ思った。