装丁の勝利

studio_unicorn20061010

島田荘司全集 I
 最近発売されて、書店で気になっていた「島田荘司全集 第1巻」を購入してしまった。
 正直言うと、島田荘司氏の小説は今までに読んだことがない。江戸川乱歩賞の最終選考に残った「占星術殺人事件」でデビューし、その後の「新本格」ブームの嚆矢となったミステリー界の巨人であるのはもちろん知っていたのだが、どうにも読む機会がなかったとしか言いようがない。読んだことがない作家の全集であるわけだし、定価3,675円かあ毎月その金額を払い続けるのはけっこう大変だなあ、しかもミステリー作家の全集なんて巻数多そうだなあ経済的負担も大きいなあ、などとさすがに購入には躊躇していたのだ。
 では、この全集の何がそんなに私を惹きつけたかって?
 それは(例によって)装丁です。戸田ツトム氏による、素晴らしくミニマルな装丁デザインが、がっしりと私のハートを摑んでしまったのだ(笑)。白くペイントした壁面のような外函の背に、題名と出版社名が小さく印字されているのみで、あとは一切文字なし。オビもなし。このミニマルに徹した潔さが、実に素晴らしい。なかなかここまで思い切ったことはできないものだ。本の表紙もまた同様の処理が施されており、カヴァーには実に渋い写真が渋〜くアレンジされて使われている。ここ数年見てきた装丁の中でも、ナンバーワンをつけたいくらい素晴らしい(写真参照。Amazon.co.jpで使われている画像は、表紙でも外函でもありません)。
アトポス
 というわけで結局のところ、物欲を抑えきれず購入してしまったが、年一冊の刊行ペースであることと、収録される作品が全て、著者自身により全面改訂されて収録されていることとが、安心材料として私の背中を押したのも事実だ。
 実は、島田荘司氏の小説を装丁買いしたのは、これが初めてではない。1993年に出た「アトポス」の装丁が、今回と同じ戸田ツトム氏による、テクスチャを重視した素晴らしいデザインだったのだ。思わず衝動買いしてしまったのは言うまでもない。そして未だに未読だったりする(笑)。
 いい機会なので(?)、この全集第1巻と「アトポス」を、近々読むとしよう。