Vinland Saga

studio_unicorn20061205

 最近、一番気になっている連載中のまんがのひとつ、幸村誠ヴィンランド・サガ」。
 先日アイスランドのことを少し書いた(2006年11月30日の日記参照)のは、これへの布石だったか(笑)。というのも、このまんがは、中世北欧ヴァイキングを描いた、とても本格的な物語で、しかも主人公トルフィンはアイスランド出身という設定なのだ。
 私は知らなかったのだが、作者の幸村誠さんはどうも遅筆なまんが家さんのようで、デビュー作「プラネテス」も相当な年月をかけて描かれたらしい。「ヴィンランド・サガ」も、最初は無謀にも(?)「週刊少年マガジン」での連載だったが、たびたびの休載により「アフタヌーン」に移籍した、いわくつきの連載だそうだ。あの描き込みの多い、膨大な時代考証と資料を必要とする絵なら、遅筆なのも無理はないと思うが……。単行本もマガジンKCで2巻まで出ていたにも拘らず、改めてアフタヌーンKC(マガジンKCとは判型が違う)で発売されてしまった。ちぇっ、マガジンKCで2巻まで買っちゃっていたよ。でも以降の巻と不揃いなのはイヤなので買いなおしました。
ヴィンランド・サガ(3) (アフタヌーンKC) ヴィンランド・サガ(2) (アフタヌーンKC) ヴィンランド・サガ(1) (アフタヌーンKC)
 作品そのものの紹介はキーワード解説に譲るが、私がこのまんがですごいと思うのは、この時代を、11世紀のヨーロッパを、見事なくらいに忠実に再現している、という点だ。これは衣服とか武器とか道具とか、目に見える要素だけのことではない。当時のヴァイキングや他のヨーロッパ人のものの考え方や世界観・宗教観、社会構成・生活様式や価値観など、目に見えない"空気"みたいなものを、違和感なくキチンと再現しているのだ。本当に膨大な史料と資料をもとに考証したのであろう、と思わせる。まんがだからとその辺をあやふやにして手を抜かずに、キチンと表現してみせたことは、それだけでもものすごく評価に値すると思う。もちろん、それを小難しくなく、(大半が中世北欧について何の知識もない)現代日本の読者にも分かるようにという工夫もなされている。要するに、優れた歴史ものの長所が数多く窺える作品なのだ。
 もちろん、もともと歴史もの・大河ものは大好きだし、さらにエッダやサガ(サーガ)などの北欧神話や伝説が大好きな私なので、それだけでもこの物語はとても面白く読めてしまうのだが。今後の展開が非常に楽しみである。が、ペースが遅いだけに、けっこう待たされそうだなあ(笑)。
(写真は、ノルウェーソグネフィヨルドにて。2003年7月8日撮影)