「ふゆ*きた」展

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 今日の午後は、妻と一緒に西荻窪へやってきた。西荻窪に来るなんて、何年ぶりだろうか。というより、前にいつ来たのか全然思い出せない(笑)。どうしても行動範囲外の地域には、用事がない限りなかなか足が向かないものだ。
 今日、西荻窪に来た「用事」というのは、この街にあるカフェ&パティスリーショップ「三月の羊」で開かれている、五位野健一さんのミニ個展「ふゆ*きた」を観に来たのだ。
 五位野さんの、水彩を中心とした柔らかいタッチの、半ば抽象化された絵画がものすごく大好きな私は、個展案内のDMをいただくと、必ず観に行くようにしている。今回も、五位野さんから事前にご案内いただいて、観るのを楽しみにしていた。前回個展を拝見したのが昨年の5月だったから、久しぶりだ。
 「三月の羊」は、懐かしい雰囲気を漂わせた建物&内装の小ぢんまりとしたお店で、こだわった自然素材のパンやお菓子や雑貨・絵本などを販売している。店内のカフェコーナーで、美味しいコーヒーなどを飲むこともできる、いい感じのお店だ。
 そんな店内のあちこちに、五位野さんの作品が点々と飾られている。今回は、ほとんどがポストカード大くらいの小さな作品。それがまず意外だったのだが、さらに、すべての作品がブルー系の絵の具だけで、極力筆数を減らして描かれている。今まで親しんでいたパステルカラーが主流の作品とは異なり、極力抑えた画風で、真冬の車窓の景色が描かれているのである。ほとんど抽象画、いや水墨画の領域のようだ。あるいは、私が大好きな写真家マイケル・ケンナMichael Kennaの北海道を撮影した写真作品のような。
 表現のぎりぎりまでに数を減らした筆数、その数の少なさゆえに、ひとつひとつの筆跡の重みが増し、描かれない余白が雄弁に語りだす。そして、凛とした、時に静謐を湛えた情景が立ち上がってくる。ミニ個展ながら、とても観応えのある、そして可愛らしい作品ばかりであった。
 お店にいらした五位野さんと、いろいろ語りあえたのも楽しかった。なんでも、今回の開催直前までは、ちょっと違う方向性で作品を制作していたのだそうだ。が、開催数日前にすべて没にして、3日間くらいのプチ徹夜で展示作品を全部描きあげたのだそうだ。その、大量の没作品も見せてくださったのだが、これまた没にするのが実に惜しいくらいの可愛らしく魅力的な絵ばかりだった。言葉をつけてまとめて、絵本にしたいくらいだ。さらに嬉しいことに、その没作品の中のひとつ(ポストカード大のもの)を五位野さんがくださった。これは実に嬉しい驚き。家に帰ったら、額に入れてどこかに飾るとしよう。
 今年も5月に、世田谷美術館の区民ギャラリーで個展を開くとのこと。こちらも今から楽しみだ。

(写真は、「三月の羊」の外観。店内撮影禁止だったので、今日撮った写真はこれだけです)