ヴェネツィア3日目・パドヴァへ

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 今日はひとまずヴェネツィアを離れ、内陸のパドヴァPadovaへ行き、そこからさらに内陸、山沿いのバッサーノ・デル・グラッパBassano del Grappaへ向かう。
 まずはパドヴァへ。ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅Santa Luciaからローカル線で約40分、古都パドヴァに到着。スーツケースを駅のクロークに預けて歩きだす。久しぶりに自動車のあるところに来たので、きつい陽射しの中で大通りを走りすぎる自動車の排気ガスがうっとうしく、また暑苦しく感じる。本当にヴェネツィアは偉大だなあ。
 幸いにして、この街に来た目的かつ最大の見所・スクロヴェーニ礼拝堂Cappella degli Scrovegniは駅からかなり近い(街の中心から見ると街外れ、ということになるのだろうが)。緑豊かな公園(右上の写真)の中に、小さな礼拝堂がちょこんと建っている(右下の写真)。この14世紀初頭に立てられた小ぢんまりとした礼拝堂の内壁が、ほとんどすべてジオット(ジョット)Giottoのフレスコ画で埋め尽くされており、ルネサンス絵画の先駆者といわれ数々の名作を残したジオットの作品の中でも、必見の最高傑作とされているのだ。何はともあれ、これだけたくさんのジオットの絵が一度に見られる場所は、このスクロヴェーニ礼拝堂をおいて他にない。
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 ここは文化財保護の考え方が非常に徹底していて、見学希望者はオフィシャルサイトもしくは電話で、希望日時の48時間以上前までに予約する必要がある。こうして一度に入れる人数を制限したうえで、予約した日時の1時間前に現地で切符を受け取り、その時間になったらまず15分間を温度調整室で(ビデオを観ながら)待機して体温を下げ、その後わずか(?)15分間だけ見学できるという、非常に厳重なシステムになっている。
 実のところ、私が17年前、英国留学中に初めてこの礼拝堂を訪れたときは、こんな厳重なシステムは影も形もなかった。ただふらっと来て入場料を払って中に入って、あとは制限時間なしに好きなだけ、心ゆくまでジオットの傑作を堪能したものだった。*1どうも今の仕組みになったのは、ほんの数年前のことらしい。どうりで切符売り場も、隣接する市立美術館も、建物や内装がまだ新しい感じがしたわけだ。モダンかつシンプルないい空間になっていて、素敵な感じだった。
 さて、17年ぶりの、ジオットの名作との対面である。天井はジオットが描いた青い星空が。そして、壁面には正方形の画面に描かれた聖母とイエスの生涯の絵が3段にわたってずらりと並び、巨大な「最後の審判」図が威圧する。さらに、細部に至るまで聖人の肖像などが。まさに、ひとりの画家が(小さいけれども)ひとつの聖堂を丸ごと任されて、自分のプランで自分の思うように描きつくしたという、作り手としては非常に羨むべき状況で出来上がった名作なのだ。15分という見学時間はやはり短かったが、改めてこの至宝にまみえることができて、非常によかった。パドヴァに来た甲斐があったというものだ。

  • Cappella degli Scrovegni(スクロヴェーニ礼拝堂のオフィシャルサイト。見学の予約もここでできる。イタリア語、英語のみ)

*1:帰国してから、2000年頃のガイドブックを見てみたのだが、そのころでもまだ現行のシステムではなかった。