軽〜く読めます

空中ブランコ (文春文庫)
 奥田英朗さんの小説「空中ブランコ」を、本日読了(これって直木賞受賞作だったのね。知らなかった)。
 「イン・ザ・プール」に続き、トンデモ精神科医の伊良部一郎が活躍というか暴走するシリーズ第2巻、5編を収録。とにかく軽妙で可笑しくて、軽〜く読めました。このシリーズ面白いな。
 といっても、それぞれの物語のいわゆる「主人公」は伊良部ではなく、伊良部に振り回される毎回の「患者」たちのほうで、伊良部はどちらかというと「狂言回し」的な役割かな。狙っているのか、素でトンデモなのか、単に子どもと同じで無邪気なだけなのか、伊良部の暴走ぶりに呆れて(?)、「患者」たちが勝手に癒やされてゆくのが面白い。
 それと、毎回の「患者」=主人公たちの職業にも注目だ。この巻ではサーカス団員、ヤクザ、精神科医(伊良部と同業だ)、プロ野球選手、女流作家が登場。普段表に出てこない彼らの「日常」が、なにげなくリアリティをもって描かれているのも、このシリーズの魅力だ。へ〜え、今のサーカス団の人って、ヤクザって、こんな日常なんだ〜、なんだ我々「一般人」と大して変わらないじゃん、なんて思ったりして、それも面白い。きっと作者は、それぞれの職業に対して、けっこう旺盛かつ熱心に取材をしているのだろうと思わせる。
 次の「町長選挙」も早く文庫化しないかな〜。装丁好きなせいでけっこうハードカヴァー志向の私だが、これは1冊目を文庫で買ってしまったので文庫で揃えたいんですよ。