闇に棲むものたち

studio_unicorn20080613

ポリの肖像ロマネスク 光の聖堂
 仕事の昼休みの時間に、神保町の「gallery福果」へ。ここで開かれている写真家・六田知弘(むだ ともひろ)さんの写真展「ロマネスク 闇に棲むもの」を観た。
 六田さんの写真は、以前に同じギャラリーで開かれていた個展を拝見したことがあり(2006年4月6日の日記参照)、それ以来六田さんの写真が大好きになり、この個展も前々から楽しみにしていた。
 小さな会場の壁面に飾られた、モノクロの写真作品たち。フランスやスペインの中世ロマネスク教会の、主に柱頭の彫刻を撮影した作品だ。もちろん、ヨーロッパ好き・中世好き・モノクロ写真好きの私としては、直球ど真ん中の"超"好みな作品ばかり。昼休みの短い間だったが、ひとつひとつ丹念に、じっくりと拝見した。私が2年前に訪れたことのある、中部フランスの、ヴェズレーやオータンのロマネスク聖堂の柱頭彫刻の写真などもあり、見覚えのあるものも。
 大聖堂は中世の人々の世界観の凝縮、ミクロコスモスだった。闇にうごめく奇怪な怪物たちも、世界のどこかに実在すると信じられ、ゆえに聖堂の彫刻として描写されているのだ。奔放な想像力と素朴で味のある表現によって。それら彫刻に込められた、当時の人々のさまざまな願いや祈りが、写真の画面を通じて伝わってくるような。観ていて穏やかな心持ちになる、素晴らしい作品群であった。
 会場には六田さんご本人がいらっしゃっており、幸運なことに少々お話しすることもできた。昼休みの短い間だったのであまり長くお話できなかったのは残念だったが、ご本人の言葉で自作を語られるのを聴く機会があったのはとても貴重だ。

(写真は、フランス・ヴェズレーの大聖堂内の柱頭彫刻。これは私が2006年7月11日に撮影したもの)