寝る前に「ねたあとに」

studio_unicorn20090415

ねたあとに
 長嶋有さんの長編小説「ねたあとに」を、昨日読了した。
 購入したときに一度紹介した本(3月23日の日記参照)。期待に違わぬグダグダぶりが楽しい小説でした。
 作者がモデル?の作家コモローとその家族や知人が集まる夏の山の家を舞台に、(仕事だのややこしい人間関係だのそういうのはひとまず全部下界に置いてきて)ひたすら手作りのアナログゲームをして過ごすだらだらぶりが、なんと3年越しに続くというスゴイ小説だ。あ、3年間ということではなくて、夏の数日が3年ぶん、という意味での「3年越し」です。
 ぐだぐだを描いているようで、何気ないことをそのまま、思考の過程を省略することなくそのままなぞるという文章の描写が意外に効いていて、実は無為の、何気ないものごとの中にこそ「生活」ひいては「人生」がある、みたいなことを考えてしまう。なかなか奥の深い小説だが、でも全然深くないです、みたいなふりをしているのがまたスゴイ気もする。
 次々と出てくる手作りゲームのオンパレードも楽しい。そしてゲームをすること=死までのヒマつぶしこそが、実は人生の本質だと知るのだ。そこには"我々は無為なようで、立派に「住む」ということをしている。"(本文328ページより引用)という達観らしきものにも通じているように思う。
 それにしても、ある家族と周囲の人々が、山荘という"場"を通じてゆる〜く繋がるコミュニティらしきものというか、緩い連帯らしきものというか、その少し勝手知ったる感覚のようなものの心地よいこと。この感覚、けっこう身に覚えのある人、多いんじゃないだろうか。この本を薦めたい友人の顔がけっこう浮かんでくるな。

(写真は4月12日に、上野公園にて撮影。ブレ加減が却っていい感じだ)