モランディのまなざし

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 今発売中の「芸術新潮」2005年5月号の特集は「モランディのまなざし」。前号の予告でこの特集名を見たときは狂喜乱舞した。「芸術新潮」で個人のアーティストの特集をやるときは、大抵その人の展覧会(しかも大規模なもの)が国内で開かれることが多いからだ。もしかしてモランディの作品がたくさん見られるのか……!? と期待したのだが、実際に5月号を見ると、もちろん内容には大変満足したものの、別にモランディの展覧会が近々あると言うわけではないようだ。正直がっかり。まあ、あんな地味(?)な画家の展覧会なんて、集客が見込めそうにないから、日本ではムリか……。
 ジョルジョ・モランディGiogio Morandiは20世紀イタリアの画家で、淡い光なのか抽象化された形象なのか、輪郭が溶け出すような絵をたくさん描いた人で、中でもひたすら卓上に置かれた壜の絵を繰り返し繰り返し描いたことで有名である。私は、この何の変哲もない壜の絵画群がとにかく大好きで、観れば観るほど画面の中の"静謐"さが伝わってきて、すごく穏やかな心地になる。私が"作品"作りで追求しているのも"静謐"なので(実際に壜の画像を使った作品も作った)、私自身もモランディの影響を大きく受けていると思う。また、ルイージ・ギッリという写真家がモランディのアトリエ(実際に絵を描くのに使われた壜が多数残されている)を撮影した写真もまた、モランディ自身の絵と同じく実に静謐な雰囲気に包まれていてすごくイイのだ。モランディの絵がどんなものか見てみたい人は、とりあえず下にリンクしてあるモランディ美術館のホームページをご覧ください。
 最近出た本によると、モランディの「孤高」なイメージは同時代の人々によって作られたものであるらしいが、それでもあの壜の絵の中に閉じ込められた「永遠に続くかのような静謐」は、ちょっと彼と同時代のほかの絵画には見つけることのできないものである。
芸術新潮 2005年 05月号
 今回の特集にはモランディが生きた街ボローニャのガイドも載っていたので、もしかしたら、実は航空会社とのタイアップ話が出てどこかに行けることになって、「ボローニャへ行って美味しいもの食べたーい! そうだモランディなんかどうだろう」という軽いノリで企画が決まったのかも知れないのだが、「芸術新潮」が特に国内展がないのにモランディという一見地味(?)な作家を特集に選んだのは、とても意義深い気がする。ちょっと深読みすると、「クウネル」などに代表される、最近流行りの"ほっこり"系に通じるものをモランディの絵画の中に感じた編集者がいて、そういうものが好まれている今なら、こういう絵が受けるかもしれないぞということで特集に選ばれたのだったりして。考えすぎかな。でも、とある書店で「Pen」と並べて置かれていたのは見たので、案外「クウネル」とかほっこり系の本と並べる書店もあるかもしれない。いい組み合わせかも。ともかく、特集の中味は素晴らしかったです、はい。ボローニャのモランディ美術館へすごく行きたくなった。
(掲載した写真は、モランディの絵とは似ても似つかないが、私なりのモランディへのオマージュのつもりで撮影した窓辺の壜たちです)