「かもめ食堂」

かもめ食堂 [DVD]
 午後は妻と新宿に出かけ、映画「かもめ食堂」を観てきた。
 昼過ぎに映画館へ行って夕方の回の整理券を手に入れ、他の用事(パスポートの受け取りや買い物や腹ごしらえなど)を済ませてから、改めて開場15分前に映画館へ。
 我々が観た「新宿文化シネマ4」という映画館は、席数が8×7列=56席しかなく、スクリーンの大きさも、劇場の規模にふさわしくとても小さい。まるで映画会社の試写室みたいだ。さらに、予告編もなく(ちょっと残念)いきなり本編上映。
 もっと奇妙な映画なのかと思っていたが、思いのほか普通(笑)に面白い、心地よい映画だった。ヘルシンキの風景や、キレイなお店の中の様子が素敵。それに、随所に出てくる料理! シナモンロールや豚肉の生姜焼きや鮭、とんかつや鶏肉の唐揚げ、そして物語のカギであるおにぎり。空腹時にはとても危険なくらい美味しそう。なんとも食欲をかきたてる(笑)、素敵な映画だった。フィンランドを舞台に、おにぎりや日本の定食が活躍する(笑)映画でした。詳しくは私のホームページSTUDIO UNICORNのレビューにいつか書く予定。フィンランドはまた行ったことがないので、行ってみたい気分がすごく高まりました(2006年4月19日の日記参照)。
 観終わって、いい気分でプログラムを買って(このプログラムも凝った装丁で面白い)読むうちに気づいたのだが、この映画は群ようこさんの原作(?)を基に作られたのではなく、群さんの小説のほうがむしろ映画のために書き下ろした、半ノベライゼーションみたいなものであると知った。しかも、出演者の映画にまつわるエッセイも出るらしい。それらは全て幻冬舎から出るという。というより、幻冬舎日本テレビなどとともにこの映画を仕掛けている張本人なのだと知って、ちょっと幻滅。
 いや、別に「最近スローライフや"ほっこり"や北欧が流行りだから、いっちょそれで儲けてやろう」と、こういう映画のプロジェクトを作ること、それ自体は別に結構なのですよ。映画そのものは楽しませていただいたし。それが幻冬舎だ、というのがモンダイなのです。幻冬舎ファンの方には申し訳ないが、この人たちの商売っ気には、はっきり言ってモラルを逸脱した、悪辣な「えげつなさ」を私はすごく感じるので、どうにも好きになれないのだ(あくまで個人的印象ですのでご了承ください)。児童虐待のテーマを扱うのは構わないのだが、それを必然性がないのに「売らんかな」のために無理やりミステリーだと宣伝しまくったかのような(しかもミステリーとしては最悪だった)、要するに真剣に向き合うべきテーマを商売のために利用したようにしか見えない最低小説「永遠の仔」や、テレビのワイドショーや週刊誌を総動員して、ヒロミ・ゴーの頭の中で「お嫁サンバ」が鳴り響きまくったごとき「ダディ」など……幻冬舎と聞いたとたんに、急にそれらと「かもめ食堂」が同列に見えてきてしまい、すごくイヤ〜な気分になった。せっかくいい映画だったのに、残念。

(写真は、雨まじりの新宿高層ビル街にて)