遥かなるモンゴルの空

蒼き狼の伝説 TOMITA ON NHK〜冨田勲 NHKテーマ音楽集
 昨日、NHK大河ドラマの音楽を聴いて、冨田勲の音楽の素晴らしさを再認識したせいか、今日も冨田勲の「蒼き狼の伝説」"Strom from the East"を聴いてしまった。
 これは、1992年に放映されたNHKスペシャル「大モンゴル」のサウンドトラック。私自身、リアルタイムでこの、チンギス・ハーンモンゴル帝国を扱ったドキュメンタリーを(全部ではないが)観て、その中で使われていた素晴らしいシンセサイザー音楽にすっかり魅せられCDを購入したのだった。今でもこのCDは、私の一番大切なCDのひとつで、iPodを購入したときも真っ先にこのCDの曲を取り込んだほど。そのゆったりと雄大で飛翔感にあふれ、時にとてもエモーショナルなサウンドは、いつでも私を、まだ見ぬモンゴルの果てしない草原へいざなってゆく。あるいはそれは、ファンタジー物語に出てくるような、異世界の大地かもしれない。いずれにしても、遥かかなたの非日常へ飛翔してゆくような、言葉にできないほどの浮遊感をこのCDから感じるのだ。名作!
 実は、このアルバムは、冨田勲さんが自身の作曲した曲のみでアルバム全体を構成した、初めてのオリジナルアルバムだったのである。それまで数多くのテレビドラマなどに素晴らしい音楽を書いていた冨田さんだが、レコードやCDを発表するのは決まってクラシックの曲をシンセサイザーでアレンジし演奏したものばかりだった。まあ、確かに"シンセを使う"ことそのものが話題になり、珍しかった時代だったからね。それが、この「蒼き狼の伝説」で初めて自分の曲をアルバムにまとめたのだった。冨田さん自身にとっても、これらの曲は、音楽として自信を持って送り出せるものだったのかもしれない。
 それほどの素晴らしいアルバムなのに、Amazon.co.jpではユーズドのみ、HMVでも扱いがない。寂しい限りである。わずかにテーマ曲のみが"Tomita on NHK"(なんと! あの「ニュース解説」のテーマ曲が入っている!)で聴くことができるのみ。残念だなあ(と言っても、自分は持っているわけだからいいと言えばいいのだが)。