涙のお伽噺

シザーハンズ<製作15周年 アニバーサリー・エディション> [DVD]
 お馴染み「ずーっと昔にVHSに録画してあった映画を観てから、VHSを処分しよう」シリーズ。今日は、ティム・バートンTim Burton監督、ジョニー・デップJohnny Depp主演の「シザーハンズ」"Edward Scissorhands"。
 この映画が未見だったのはワケがある。この映画(1990年)の前年に公開された「バットマン」"Batman"があまりにつまらなくて駄作だったので、以後のティム・バートン映画を観る気がすっかり失せてしまったのだ。その10年後に「スリーピー・ホロウ」"Sleepy Hollow!を観て、その面白さにようやくこの監督を見直したが、その間に公開された「シザーハンズ」は、したがって、まったく観ようと思わなかった。
 そもそもテレビ放映の録画だけはしてあったのだから、まあ有名な作品だし観ようという気はあったらしい(笑)。でも、結局今まで観なかったということは、どこか今ひとつ強烈に観たいという気持ちがなかったのかもしれない。
シザーハンズ (特別編) [DVD]
 確かに観た感想としては、もの悲しくも美しく、(今から考えると)いかにもティム・バートンらしい、不思議でちょっといびつで奇妙な世界観に満ち溢れた、素敵なお伽噺だ。もっと早く観たかったものだ(笑)。まだ20代のジョニー・デップの怪演(快演?)ぶりは言うに及ばず、まだ10代だった(多分)ウィノナ・ライダーWinona Ryderの演技もとてもいいし、アラン・アーキンAlan Arkinなどの脇役もいい味を出している。いかにもアメリカらしい新興住宅地、という感じの"下界"と、鋏の手を持つ人造人間エドワードが住む、不可思議と闇を内包したオールドスタイルなお城の、"2つの世界"の対比も際立っていて効果的だ。
 それにしても、なぜエドワードは鋏の手をしているのだろう? このアイディアはどこから来たのだろうか。
 きっと今までさんざん話題になってきたネタだろうし、いろいろな解釈が可能なのだろう。ひとつ私が感じたのは、これは優れた芸術を生み出す芸術家のメタファーかな、ということだ。優れた芸術家は、その優れた才能と引き換えに、あるいはその才能ゆえに、どこか一般社会に適応できない面を持ち、それが(その才能も)社会の中で諸刃の剣になったりする。そして、社会に適合しきれずに、自分だけの世界へ帰ってゆく……そんなことを表現している、と見ることも可能ではないだろうか。