ブッツァーティのこと

石の幻影―短編集神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)
 数日前に、イタリアの作家ディーノ・ブッツァーティDino Buzzatiの短編集「神を見た犬」(光文社古典新訳文庫)を読了。
 4月に書店でこの本を見つけたときは、「おっ、ブッツァーティを出すとは、古典新訳文庫やるじゃん」と、大喜びで購入したのだった。幻想的な物語やファンタジックな設定を、独特のジャーナリスティックな文章で淡々と綴る、短いが印象的な物語の数々。風刺を込めた軽い掌編も含め、奇想と幻想に満ちた22の短編を、堪能して読むことができた。
 私がブッツァーティの小説を知ったのは9年前、朝日新聞の書評欄で「石の幻影」(河出書房新社)の紹介文を読んだことだった。内容に興味を持ってさっそく購入。実際に読んだのは、それからずいぶん経ってからだった。SF的発想が独特の幻想性と結びついた表題作の中編(長編といってもいいか)「石の幻影」も素晴らしかったが、同時に収録されていた5つの短編がまたいい味を出していて、私はすっかりこの作家の小説が気に入っていたのだった。
 特に大好きな短編は「驕らぬ心」(「石の幻影」では「謙虚な司祭」という題で収録)。ラストの感動的な場面が胸をジーンと熱くさせる。何度も読み返したくなる、心温まる物語だ。