「アンカー展」

 昼間は妻と渋谷へ。
 何か展覧会や映画を観たい気分だったが、映画はイマイチ観たい気分のものがないし、上野の「ムンク展」にがんばって行こうかと思ったが(昨日行くつもりが頭痛で行けなかったので)、上野へ往復して展覧会を観てとなると体力を消耗しつくしてしまい、このあと予定しているHMV渋谷でのCD漁りができなくなるのはツライので断念。
 代わりに、渋谷Bunkamuraで開かれている「アンカー展」を観てきた。ポスターになっているかわいいネコちゃんを抱いた少女の絵が気になっていたので、どんなものだろうかと思っていたのだ。
 寡聞にして私はまったく知らなかったのだが、アルベール・アンカーAlbert Ankerは19世紀スイスの画家で、パリと故郷を往復して生活・仕事していたようだが、描いたのは一貫して故郷スイスの生活や人々だったようだ。こういうのは、現代ではともすれば"さしたる価値のない風俗画"として片付けてしまう輩(そういうヤツは社会性やら問題提起やら政治やらジェンダーが含まれていないと"芸術"とみなさない、唾棄すべき輩が多いのだが)もいそうだが、"ただの絵"が持つ"ただの美しさ"、人々の目を理屈抜きに楽しませる"観て美しい"ということがいかに大切か。改めて実感させてもらったような気がする。
(追記……誤解のないように書いておくと、アンカーは当時の社会状況を冷静に分析・観察し、作品の中に反映させていました。ただ声高に問題提起するようなことはなかったようです)
 近くで見ると筆のタッチを見てとれるのだが、ちょっと離れて見ると実にリアルに写実的に表現された、時に愛らしい、時に微笑ましい、時に生活の一場面をよく捉えた絵画たち。肩肘張らずに楽しめる、いい展覧会だった。生活の一場面を描いた絵の透明な空気感や、数は少ないがいくつか出ていた静物画の静謐な佇まいが、特に気に入った。1月20日までの開催です。