まるまる1か月かかって、フランク・シェッツィングFrank Schätzing(Frank Schatzing)著「深海のYrr(イール)」上中下巻を読了。
全3巻、文庫版で1,600ページ以上。いやあ物量もさることながら、内容的にもものすごい読み応えでした。海洋冒険小説・科学小説・パニックもの・サスペンス・軍事小説・そして何よりSFの醍醐味が詰まっている。常々ジャンル分けというものの不毛さを説いている私だが、この小説こそまさしくそれだ。ジャンルというつまらないものを超えて、第一級の"物語"である、としか最終的には言いようがない。ヨーロッパでは「エコ・サスペンス」と呼ばれているらしい。
読了して、果てしない大海を渡りきったような、そして切なさが心に残る。こういうタイプの小説には不似合いな感想かもしれないが、大きなことを成し遂げるために、たくさんの魅力的な人物たちの犠牲が大きすぎたのだ(もちろん、小説の中で)。
それにしても作者は大変な映画好きのようで、物語の随所に、さまざまな映画や俳優への言及がちりばめられている。そのほとんどが、大作アクション映画やパニック映画、SF映画などに関係したものであるのが嬉しい。この小説も、映画にしたらすごそうだ。実際、映画化の企画が進行しているとのことである。