大地の柱

studio_unicorn20090616

 本日、ケン・フォレット氏の名作「大聖堂」全3巻"The Pillars of the Earth" by Ken Follettを、ようやく読了した。
 上中下合わせて1,600ページの超大作。ノルマンディー侵攻後の中世英国の架空の町キングスブリッジを舞台に、大聖堂建設に情熱を燃やす職人や聖職者たち、それを取り巻く人々の壮大な人間ドラマを描く、文字通りの大河小説だ。
 大学時代に中世ヨーロッパの美術史を専攻していたこともあって、この名作の誉れ高い小説のことはずーっと気になっていたのだが、長らく絶版だったこともあって、ようやくこの歳になって読むことができた。そして、間違いなくこの小説がものすごく面白い、名作の名に相応しい作品であることを確認したのだった。
 石工のトムと跡を継ぐジャック、修道院長フィリップを中心に、生き生きと描かれる登場人物たちの人間模様が見事に積み上げられ、(さすがスパイ小説の名手だけあって)様々な伏線が張り巡らされて見事に功を奏し、物語に活力を与えて素晴らしいタペストリーのような物語が紡がれる。さらに、見てきたかのように生き生きと活写される、中世の社会や人々の暮らし。そして作中で劇的に示されるロマネスクからゴシックへの建築様式の変遷。
大聖堂 (下) (ソフトバンク文庫)大聖堂 (中) (ソフトバンク文庫)大聖堂 (上) (ソフトバンク文庫)
 さらに、この愛憎劇の背後に織り込まれる、英国史を彩る数々の事件〜ヘンリー1世の後継者争いから発展した内戦とヘンリー2世の登場、そしてかの名高いカンタベリー大司教トマス・ベケット暗殺事件〜。そう、物語の最後には私にとってはとても懐かしいカンタベリーCanterburyの町や大聖堂も登場するのだ。読んでいるうちにまたカンタベリーに、いや英国にすごく行きたくなってしまったな。
 全ての人に薦めたい、素晴らしい物語。先ごろ邦訳が発売された、18年たって書かれた続編「大聖堂−果てしなき世界」も、読むのがとても楽しみだ。
(写真は、英国ソールズベリ大聖堂Salisbury Cathedralの身廊にて。2008年9月11日撮影。ゴシック様式特有の尖頭アーチとリヴ・ヴォールトがよく見て取れる。このソールズベリの街も、物語の最初のほうに出てきます)