ネバーランドを追いかけて

studio_unicorn20090626

ネバーランド (集英社文庫)
 恩田陸さんの小説「ネバーランド」を、本日読了。大好きな恩田さんの小説、もちろんこれも非常に面白かった〜。
 2000年発表。恩田さんのキャリアとしては、比較的初期?の作品といってもいいのか。それでも、4人の高校生が冬休みに寮生活を過ごすという、筋立てだけ聞くと非常にシンプルなストーリーを、これほどにリーダビリティに溢れたスリリングな物語に仕上げるあたり、既に恩田マジックは見事に発揮されまくり。もちろん、「ノスタルジーの魔術師」の異名をとる恩田さんのこと、こちらのツボをつくノスタルジーの仕掛けも満載で、本当に読むのが楽しい小説だ。
 恩田さん自身が、単行本当時のあとがきで、この小説がのちの作品の原型となる重要な作品となる気がする、と書かれているが、まさにその通り。後年の「夜のピクニック」や「黒と茶の幻想」などでさらに展開されてゆくことになるモチーフや主題、魅力的なキャラ立てなど、その原型とも呼ぶべきものが、この小説には初々しいまでの魅力を放って詰め込まれているのだ。
 奇しくもマイケル・ジャクソンMichael Jacksonの訃報(心よりご冥福をお祈りします)が伝えられたその日に、「ネバーランド」という題名の小説を読み終えたとは、何たる偶然の一致か。この物語の「ネバーランド」は、二度と戻れぬ少年時代を指すのだと思う(この辺からして恩田さんのノスタルジー・マジック全開なのだが)が、その御殿のような自宅を"Neverland"と名づけたマイケル氏のほうは、永遠に辿り着けぬはずの童心の世界へ行ったままになってしまったようにも思えるし、それともそこから戻る矢先の不幸のようにも思えてしまう。
 やはり、その場所は「ネヴァー」なのか。「決して存在しない」のか。
(写真は6月12日、代官山にて撮影)