中世ヨーロッパの特質

中世世界とは何か (ヨーロッパの中世 1)
 岩波書店の「ヨーロッパの中世」シリーズ(全8巻)の第1巻、佐藤彰一著「中世世界とは何か」を、本日読了。
 大学時代は中世ヨーロッパの美術史を専攻していたし、その頃から今でも中世ヨーロッパが大好きな私としては、このシリーズのユニークな切り口や視点がとても興味深く、新刊が出るたびに購入してきたのだが(こういう本はあるうちに買っておかないとね)、読むほうは、これでようやく一冊読んだ、というところ。この第1巻なんて昨年の11月に出た本だから、ずいぶんたってからの読了だ。
 中世を、単に「古代と近代の間の時期」ではない、中世を中世たらしめている特質をつかみ出し、かつユーラシア規模での人の移動という大局的な視点から描き出そうという、実に刺激的な試み。作者の佐藤彰一さんは、とりわけ中世初期のフランク王国からフランスの国制や社会史を専門にしていらっしゃるそうで、そのためか特に初期中世の小国家形成についての叙述が多い。社会システムや税制についての叙述などは多少難しかったが、それでも年代別ではなくテーマ別の記述法(国家システムや王権の形成、貴族層や修道院の発展など)なので、作者が意図せんとするところが摑みやすい。多少時間はかかったが、とても面白く読んだ一冊だった。
 2巻目以降も面白そうなテーマが並ぶ。近いうちに読んでいくとしよう。