常野の人々

studio_unicorn20080902

蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)光の帝国 常野物語 (常野物語) (集英社文庫)
 集英社文庫の「ナツイチ」を機に購入した、恩田陸さんの小説「光の帝国―常野物語」を、本日読了。
 私が今、一番好きな小説家は誰かと訊かれたら、間違いなく躊躇いなく恩田陸さんの名を挙げるだろう。それほど、恩田さんの小説が大好きな私である。あの素晴らしい大作「ネクロポリス」でどっぷりとハマってから(2005年11月18日の日記参照)、ずいぶんと恩田さんの本を読んできたが、なかなか多作な作家さんであるがゆえに、まだまだ読んでない本が多い。
 特に、前々から気になっていた、不思議な超能力を持つ"常野"の人々を描いたこの連作集は、根強いファンが多いと聞いていたので、ずいぶん楽しみにしていたのだ。読後感は、期待以上のものだった。
 なんというか、設定の仕方や言葉の選び方、文字によって紡ぎだされる"空気感"のようなものが、絶妙に"ツボ"なんですよね。例えば宮部みゆきさんなんかとは決定的に違う、微妙なノスタルジィ・穏やかで理知的な曖昧さ・不思議な味わいなどなど。展開としては起伏のない、淡々としたエピソードが多いのに、見事に物語の世界へ引き込まれていってしまい、どんどんと読み進めてしまう。その"話術"の巧みさに、余人に真似できない恩田さん独特なものを感じるのだ。
 「常野物語」のワールドは、恩田さんらしく緩く広がっているようで、さっそく次に出た長編「蒲公英草子」を読み始めた。まだ未読の本が多くて、楽しみは当分尽きないな。

(写真は我が家のリヴィングの窓辺。8月3日撮影)