曲線の美

studio_unicorn20070203

 素晴らしくよく晴れた日。妻と一緒に六本木に出かけ、先月開館したばかりの国立新美術館を見に行く。
 私は、てっきり防衛庁跡地にこの新美術館ができたのだと思い込んでいたのだが、実際に行ってみて、それが間違いだと分かった(笑)。防衛庁跡地に作られているのは「東京ミッドタウン」(3月30日グランドオープン予定、ここにも新装サントリー美術館が入る)だったのね……。たはは。新美術館のほうは、そこから徒歩5分くらいのところにあった。
 それにしても、ヒルズ以外の用事で六本木に来るのは、本当に久しぶり。かつて編集者をやっていた頃は必要があってよく来ていたのだが、どうにも六本木は、特に六本木交差点の周辺は、ゴミだらけでキレイじゃないしゴミゴミしているし、全然好きになれない街だった。どうしてこんな汚い街が"お洒落な憧れの街"なのか、非常に理解に苦しんだものだ。しかし、今日久しぶりに訪れてみると、やっぱりゴミゴミと薄汚れた印象だった。私の錯覚だけではなかったようだ。
 さて、国立新美術館。開けた丘の上にどーんと立っている。この、収蔵品を持たない"美術館"が、果たして「美術館」と呼べるものかどうか(英語の名称はThe National Art "Center"で、Museumと名乗っていないんですよね)とか、箱ばかり作りやがって日本の美術・文化の支援になるのかとか(私はそれには否定的。人の支援をしていかなければ意味がないと思う)、いろいろ議論がなされているのだが、とりあえずそれらは置いといて、黒川紀章さんの設計した建物自体は、なかなか素敵だ。特に前面ガラスで覆われたファサード部分の曲線が、非常に美しい。ガラス張り&吹き抜けのおかげで、中に入ってもとても開放的な雰囲気だ。
20070203a
 ここにしばらく佇んでいて、改めて実感したのだが、私はやっぱりガラス張りの建物が大好きだ。自分が閉所恐怖症というのもあるが、採光性・透明感=軽やかさ・開放感がすごく味わえるのは、なんといってもガラス張りであるおかげだからだ。そして、小さい頃から(近所にいくつかあった)ガラス張りの建築に、未来的というか、すごく非日常的な憧れを感じていたのもあるのだろう。私はこういう建築が大好きなのだなと、改めて実感。
 開館記念展示の「20世紀美術探検―アーティストたちの三つの冒険物語―」が催されていたのだが、ものすごく大規模で相当にエネルギーを使いそうなので、今回はパス。代わりに、フリーで入ることができる「黒川紀章展」を観る。氏が手がけた建築を、縮小モデルや写真などを使い、立体的に構成した展覧会で、あまり成功した例がない建築の展覧会としては、けっこういい感じの展覧会だと思った。う〜ん、でも黒川さんってすごくいろいろな仕事を手がけているのだなあ。知りませんでした。カザフスタンの首都の再整備事業(完成予定は2030年!)なんてのもあるのか……。
 しっかし、この展覧会だけでも非常に広大なスペースだったのが、これで全体のたった17分の2しか使っていないということで、いかにこの新美術館がとてつもなく広大な展示空間を有しているかがわかる。実際、半分くらいのスペースがまだ使用されていないか、近々開催予定になっているのだ。ひとつの美術館で、メジャー級の展覧会を同時にいくつも開催できるのか。昨年行ったパリのポンピドゥー・センターを思い出した。あそこは所蔵作品があるが、いくつもの規模の大きい展覧会を同時に開催している、というのはここと似ている。
 そうか、この新"美術館"は、英語名のとおり、"museum"ではなくて"center"なんだ! ようするに、学芸員を擁して企画・研究部門は持ちつつも、要するにアートに特化したイベントスペースなんだ。どうりで、東京国際フォーラムビッグサイトを連想すると思ったら、役割としては同じってことか。納得。となると、あとは使う人&使い方次第、ってことですね。
Breaking & Entering (OST
 地下には、かなり大きなミュージアムショップが。「スーベニアフロムトーキョー」という、シボネCÏBONEがプロデュースしたショップで、佐藤可士和氏がデザインしたオリジナルグッズや、若手アーティストの作品や、その他いろいろのグッズや本が販売されている。店内でかかっているアンビエントエレクトロニカの曲がすごくいい感じで、「この曲すごくいいなあ。CD欲しいなあ」などと思ってしばらく聴いていたら、すでに持っているCDだということに気づいた(笑)。Underworld and Gabriel Yaredの"Breaking and Entering"サントラ盤でした。

20070203c20070203b
 外に出てみると、素晴らしい夕焼け空が広がっていた。これを見られただけでも、今日来た甲斐があったというものだ。というくらい素敵なグラデーションに彩られた空でした。