下北沢再開発についてのひとつの見解

studio_unicorn20050604

 先日書いた「下北沢を救え!」(2005年4月23日参照)の記事に対してid:wineさまが書かれた疑問について、私の見解を書かせていただきます。いろいろと調べたり考えさせる機会をいただき、ありがとうございます>wineさま。
 まず、誤解を解きます。「Save the 下北沢」の人たちは「頭ごなしに反対している」わけではありません。彼らのホームページをご覧いただければお分かりだと思いますが、代案を準備中です。
 小田急線が地下に引っ込むことによって、路線の跡地を何らかの形で再利用する必要はあるのです。(なぜか肝心のこの跡地の利用用途については、行政は公表に消極的なようです)ただ、それとは(同じ事業計画に属しているというだけで)本質的には無関係なはずの道路計画が一緒にくっついてきてしまっているのが問題なのです。
 私が(「Save the 下北沢」の人たちも同様だと思いますが)批判しているのは、ひとつは行政の人たちです。60年前の都市計画をほとんど修正せずに闇雲に実行しようとしている彼らです。下北沢の現状に即した見直しを一切せずに、(表面的には)ただ与えられた計画だから(しかも60年前に!)という理由で実行しようとしている行政の硬直・怠慢&無能ぶりを、私は大いに批判します。第一、小田急線が地上から消えるという一事のみでも、当初の都市計画から大きく外れてきているわけですから、見直しがないのは根本的におかしいのです。
 もうひとつは、行政の背後に潜んで、道路建設そのものはもちろん、(道路ができて周囲の建物を根こそぎつぶし、建築基準が緩むのを機会に)高層の建物を盛大に建てて儲けようともくろんでいる(と私が見る)ハゲタカのごときゼネコン・土建屋どもに対してです。まあ行政もこいつらに動かされているんでしょうがね、きっと。要するにファントム・メナスです。まあ今更くどくどしく例を挙げなくてももう十分お分かりだとは思いますが、ゼネコンどもは儲け&利益が全てです(もちろん一部にはそうでない人たちもいるのでしょうが)。住民がどうなるとか、地域や環境にどう影響するとか、一切気にしません。とにかく古い建物をぶっ壊して新しい建物を建てて、儲けたいのです、彼らは。そうじゃないという反論もあるかもしれませんが、これまでの(特に行政とからんだ計画において)ゼネコンのやり口を見ていると、私にはそうとしか思えないのです。もちろん壊すしかない老朽化した建物もありますし、繰り返すようですがそうでないケースもあります。でもこの下北沢の場合は、それがはっきりと見えている気が私にはします。
 さて、くだんの南口商店街理事長さんの主張(2004年12月23日の記事)についてですが、ちょっと気をつけて読む必要があるようです。id:solarさまが指摘しているように、この方は「(駅前)広場が必要だから、道路は(しぶしぶ)認める」というスタンス(表面的には)です。広場が必要な理由として*1、「駅前にタクシー乗り場やバス乗り場が必要」「交番が必要」「『防災に非常に弱い街』 の改善のためには、駅前広場が必要」「商店街や地域でイベントが出来る空間も欲しい」「駅前で人々が待ち合わせが出来る場所も必要」と挙げていらっしゃいます。しかし、これらは駅前広場がなければ解決できない問題でしょうか? 例えば、バス乗り場・タクシー乗り場を一箇所に集めて、駅からそこまで、地下に動く歩道を作るというのはどうでしょうか。もちろんお金のかかることですが、でかい道路を何本も作ることに比べたらかなり安く済むと思います。それから、wineさまが書かれた「一般車両進入禁止の道路」を、小田急線の跡地に作るというのも、既存の街区を壊さずに済みます。公共交通と緊急車両だけにすれば防災にも強くなりますしね。交番は広場でなければ設置できないわけではないでしょう。また、最後の二つの理由に至っては「もうやっているじゃないか」ですね。このように、道路を作らずに済む代案がすぐにいくつか浮かんでくるのに、この方が駅前広場に固執しておられるのが少々不自然にさえ思えてきます。
 さらに、この方が下北沢に4つある商店街(北口、南口、一番街、東会)のうちひとつだけの理事長であるということも指摘せねばなりません。この方が下北沢の商店街全体を代表する立場にいらっしゃるのか、それとも南口商店街だけの利害を代表して書いていらっしゃるのか、その辺りのことはわかりませんが、「Save the 下北沢」に掲載してある計画地図を見る限り、他の3つの商店街と違い、南口商店街はこの計画によってほとんど「被害」を受けません。
 また「しもきた商店街振興組合」という団体から、この計画に対する見直しを要請する意見書が出されています。この意見書は、明らかにこの方の意見と異なり、巨大道路ができることによる弊害を指摘しています。この団体と南口商店街理事長の方との関係はわかりませんが、同じ下北沢の商店街の方として、この理事長の方はこれに対してどういうご意見なのでしょうか。一切明らかにされていません。
 この方の文章の論調にも気をつけるべきだと思います。『美味しいとこ取り』 という表現を使っておられますが、まるで駅前広場をつくるためには少しは我慢せよというようなニュアンスが感じられます。『美味しいとこ取り』 でなぜいけないのでしょうか? 住民や利用者たちが一番『美味しいとこ取り』 できるように行政や地域が考える必要があるのではないでしょうか? 少なくとも行政が一番最善の、住民や利用者が一番『美味しいとこ取り』 (ゼネコンどもの『美味しいとこ取り』 ではなく)できるように検討に検討を重ねて出してくるべきです。そのような痕跡は現状の計画を見る限り、見出せません。
 また、この方は、反対運動の人たちが、ポイ捨て防止・落書き消し・防犯防災活動などの『環境問題削減の活動』に積極的に参加しているとは思えない、というようなことを断定的に書いておられますが、(ちゃんと調べて書いているかどうかは別にして)重大な問題のすり替えです。これは、「○○募金に寄付していない人は、募金がどのように遣われようと一切口を出すな」というのと同じです。それらの活動に参加していない住民や商店主(他所からやってくる利用者はもちろん)は、どんなに自分の家や店がこの道路計画で壊されようとも、反対する権利はないと表明しているわけです。ずいぶんと傲慢で高圧的な物言いだと思います。道路計画とそれらの環境活動(私はそうした活動自体は、もちろん否定していません。念のため)に直接的なつながりはないはずです。この文章から、無関係な事柄をつなげて、自分に都合の良い方向へ感情的に誘い込もうという意図を私は感じます。『全体的に大きな多面的な視点』 という表現についても同じ意図を感じます。曖昧すぎます。どんな視点なのか明確にされていません。まさか行政やハゲタカ土建屋どもの視点ではないでしょうね(笑)。
 以上などから私は、この理事長の方のご意見からは、駅前広場やましてや計画道路の必要性に関して、説得力のある理由を見出せませんでした。むしろ、かなり感情をあおる形の、注意を要する文章であると感じた次第です。私自身は、駅前広場の必要性を完全に否定するつもりはないのですが、少なくともこの方の書かれた理由では、既存の町並みを壊して不要な道路を作ってまでの必要性はないと判断します。
 かなり考えて書いた文章のつもりですが、文章に至らぬ点があるかもしれません。乱文・乱筆の段はご容赦願えればと存じます。みなさま、私が寡聞にして存じ上げない事実がありましたら、ぜひともお知らせください。建設的なコメントは歓迎いたします。こういう事柄は、議論を封じ込めてお上の一方的な強行で行なわれるのが一番悪いと思います。賛成・反対取り混ぜて、活発に議論してより良い方向へ持ってゆくのが何よりだと思います。改めて、この文章を書くきっかけを作ってくださったwineさまに感謝いたします。

*1:wineさま、気をつけて! この方は、下北沢の 『ハード面の困り問題のワースト3』を挙げているのであって、駅前広場が必要な理由を三つ挙げているのではありません。他の二つの問題について触れていないのは、道路がなくても解決してしまう問題だからだと私は見ています。