京都3日目・「大絵巻展」

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 せっかくの機会だからということで(Yaeさま、情報ありがとう!)、京都国立博物館で開催中の特別展「大絵巻展」を観にいってきた。それ自体大変な見ものである博物館の建物(写真)を眺めながら、いざ会場へ。連休中の祝日ということで、予想はしていたが、すごい人、人、人。
 まあ何しろ「源氏物語絵巻」「鳥獣人物戯画」「信貴山縁起」という超有名絵巻物を始め、出展52点中85%以上が国宝もしくは重要文化財という、国内の重要絵巻物が大集結しためったにない展覧会であるうえに、巡回せず京都だけでの開催とくれば話題性は十分。地元・近隣・我々のような観光客も含め大挙して押し寄せて、混まないわけがない。人垣の隙間から垣間見たり、巻物をあたまから見ようとする長蛇の列に並んだりしての鑑賞となりました。といっても予想していた最悪の状態ほどひどくはなかったが。
 もともと西洋中世の彩色写本にしろ絵巻物にしろ、物語と細密な絵が大好きな私にとっては、大変面白く観ることができた(人混みのおかげでとても疲れたが……)。中でも「鳥獣人物戯画」と「信貴山縁起」をじっくりと観ることができたのは、とても素晴らしい体験だったと思う。
 が! どうしても書いておかねばならぬ不満点もある。
 まず、建物の構造上仕方のない部分もあるのだろうが、ウインドー式のガラスのショーケースにポンと平たく絵巻物が配置されていて近寄って見られないので、(特に私のような視力の弱い人には)絵巻物の微細な絵柄がよく見えない。ウインドー式のガラスケースは、大きい絵ものや彫刻を展示するのにはよいだろうが、絵巻物のようなちまちましたものを見るのには著しく不向きである。もっとも、いくつかの部屋の中央には、覗き込んで観ることができる展示ケースがあったり、「鳥獣人物戯画」や「信貴山縁起」は壁に直接掲示する形の展示だったので非常に見やすかったが、それらはごく一部であった。もう少し観客が見やすくする工夫はできなかったものか。
 そして、企画に即した会場のオペレーションというか、観客への対応・配慮が十分でなかったように思う。いくら「自由観覧です。お好きなところからご覧ください」って係員が声を枯らして言ったって、研究者やツウの人を除けば、大多数が(我々を含めて)物見遊山のシロウトなわけじゃないですか。当然、最初から順々に見ていくか有名どころへまっしぐら、ということになる。しかも絵画や彫刻なら遠くから視認して「見た」ことにしてしまえるかもしれないが、絵巻物は近寄らないと見えないうえに物語性があるので頭から見ていく必要がある。(特に最初のほうと有名作品に)列ができるのは必然だ。それなのに「列を作らずにすいている所からご自由にご覧ください」って、あんたらこの展覧会が何を展示しているのか分かってんの?と問い返したくなる。さらに呆れたのは、途中から「列が詰まりますので、恐れ入りますが少しずつお進みください」と係員が言い始めたことだ。「自由観覧」って言ったのはどこのどいつなワケ!? ここまでくるともうお笑いですな。
 もうひとつ、絵巻物なので当たり前といえば当たり前なのだが、観客の目に触れるのは、それぞれの絵巻の一部分なのである。休館日をはさんで展示替え・巻き替えをして少しずつ見せていくらしい。要するに一度来ただけでは全部を観ることができないのである。地元に住んでいる人なら何度も通えていいだろうが、我々のような一度きりの観光客はどうすればいいワケ!? あとはカタログでご覧ください、ってことか。やれやれ。
 そのほかにも、荷物預け所が建物の外にあることを始めのうちに知らせてほしかったとか(一度建物を出てしまったら再入場不可、だったように思う)、カタログもありきたりなものではなく、展示内容に合わせて横イチ(横長)の冊子にして、しかもパートごとに分冊にしてケースに入れる形式とか、もっと工夫すればいいのにとか(でも買ったけれど)、けっこう不満点はあった。
 どうも京都国立博物館は、企画自体はいいのだが、その企画の特性を生かしたオペレーションや会場運営がよくないということを聞いていたのだが、それを身をもって知ることになってしまったようだ。昨年(だったっけ?)行なわれた「スター・ウォーズ展」にしても、開催を知ったときは「おっ! 京博やるじゃん」とすごく行きたかったが(結局行けなかったが)、あとで新聞だったかでレビューを読むと、それこそダース・ヴェイダーの衣装をただウィンドーに陳列して終わりという感じの、非常にありきたりの展示方法だったようで、すごくがっかりしたことを覚えている。もっと企画の生かし方を勉強すべし!と思うぞ。
 まあ、それでも、やっぱり一見の価値はある展覧会だとは思います。そこで、Yaeさまをはじめ、わざわざこれを観に京都へ行こうと思っている人々に、当てにならないアドヴァイスをいくつか。
 まず、展示替えは月曜休館日に行なわれるようです。全期間展示作品の巻き替えも月曜日になされると私はにらんでいます。つまり、日曜日に京都に来て、日曜と火曜に観ればより多くの作品を見ることができるのです。
 それから、朝イチは熱心な人々が押しかけるので、むしろ11時ぐらい〜昼過ぎが比較的ゆったりするような気がします。GW後の平日には人の流れが変わるかもしれませんが。オフィシャルサイトには混雑状況が掲載されていますが、あまりリアリティがないような気がします。
 それから、時間を惜しまず、一日かけるつもりで行くこと! できれば(建物から出れないので)軽食などをこっそり持っていくのも手かも(笑)。
 というわけで、日曜日の朝イチに京都に着き、11時ごろに会場に入って(もちろんチケットぴあなどで前売価格で購入しておく)、一日じっくり鑑賞し、月曜日は休息や市内観光などほかのことに時間を使い、火曜日に再び会場に入ってじっくり見る、というのはオススメかもしれません。といっても、あくまで「当てにならない」アドヴァイスなので、一切責任は負いませんが(笑)。あしからず。