ヴェネツィア6日目・旧き教会を訪ねて

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 トルチェロ島には、2つの教会が並んで建っている。この2つの教会だけが今も残り、この島のかつての繁栄を偲ばせる。朝食後、この2つの教会を見に行く。すでに私は2回見ているわけだが、せっかくこの島に来ているのだから、これを見ないで帰るわけにはいかない。
 広場から向かって右側(手前)が、11世紀に立てられたサンタ・フォスカ教会Santa Fosca。西ヨーロッパに多く見られる長方形の形ではなく、東ローマ帝国ビザンチン帝国)の東方教会の建築に多い、円形を基本とした集中型の建物だ。ヴェネツィア共和国ビザンティン帝国とつながりが深く、文化的にも大きな影響を受けていた証左だ。さらに、建物を石の回廊が取り囲んでいるのが特徴的(右の写真)。このように、この教会は建物の外観が見所で、中はひんやりとした素朴な空間が広がるのみ。
 対して、左側(奥)のサンタ・マリア・アッスンタ聖堂Cattedrale di Santa Maria Assuntaは、外観はほとんどの西方教会と同じバジリカ(バシリカ)形式Basilicaでよくある形(私は好きだが)だが、中に入るとビザンチンの世界が広がっている。最初に建てられたのは7世紀とのことで、ヴェネツィアで現存する最古の教会である。今ある建物も11世紀に建てられたそうな。
 ここは入場料が必要。中に入ると、奥の祭壇と反対側の正面入り口の壁面が、きらびやかなモザイク画で埋め尽くされているのだ。ヴェネツィア本島のサン・マルコ教会や、ラヴェンナのサン・ヴィターレ教会をはじめとする数々のビザンティン教会と同じく、ここもビザンティン文化の成果が花開いていたのだ。正面入り口はもちろん「最後の審判」図、そして祭壇にはすっくと大きく立ち上がる聖母子像とその下には12使徒の像が描かれている。いかにもビザンティン様式らしい人物の素朴な表情と、背景を埋め尽くす眩いばかりの金色のモザイクとの対比が素晴らしい。
 さらに、祭壇と信徒席とを区切る柱があり、その上に聖人たちを描いた板が渡されている。11世紀の頃は、さらに多くのイコンが並べられて信徒席から祭壇を隠し、まさに東方教会ならではの秘儀的な礼拝が行なわれていたのだろうか、などと想像してしまう。
 充分に堪能してから教会をいったん出て裏手に回り、鐘楼の塔を上ってみる。かなり高い鐘楼だ。以前に来たときは上った記憶がない。上れれば上ったはずなので、この鐘楼が観光客に開放されたのもここ数年のことなのかもしれない。この島の観光化に力を入れている、ということなのか、これも。
 鐘楼を上りきると、素晴らしいラグーナの景色が広がった。
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 昨日訪れたブラーノ島が見える。
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 この干潟こそ、ヴェネツィアの全ての始まり、全ての源。ヴェネツィアを産み出した「ゆりかご」なのだ。
 それにしても、本当に素晴らしい眺望だ。