予想外の展開

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方舟に積むものは
 朝、仕事に向かう電車の中で、先日購入した望月通陽さんのエッセイ集「方舟に積むものは」を読み始める。
 ちょっとした顛末で(9月20日の日記参照)予定外に読むことになった「野性の呼び声」を先週末に読了したので、今週は家に積み上げられている本から何を読もうかな〜、長いのを読む前に望月さんのエッセイ集でワンクッション置くかな〜、というわけでこの本を持ってきたのだった。
 前にも書いたように染色家・造形作家である望月通陽さんの作品がものすごく大好きな私だが、文章ものをまとめて読むのは初めてだった。というかエッセイ集を出していたこと自体、最近知ったのだった。
 というわけで、電車に乗るやさっそく本を開いたのだが……。
 失敗だった。
 いや、本がつまらないわけではない。
 むしろ逆だ。電車の中で走り読みするには、あまりにも勿体なさ過ぎるのである。
 各章は短くてせいぜい3ページくらい、そのそれぞれのあとに望月さんの染色画が掲載されている。
 この本は、自宅で夕食後とかくつろぎの時間に本を開いて、ゆっくりと一言一句を味わいながらひとつの章を読み、そのあとに掲載されている染色画を楽しむ、そんな読み方・味わい方が相応しい本だ。
 ということで、この本は自宅で少しずつ読むことに決めた。
 電車では、別の本を読むことにしよう。
 それにしても、先日の「不覚」の件といい今回といい、電車内読書における予想外の展開(?)が続いている。
女王国の城 (創元クライム・クラブ)Elle a table (エル・ア・ターブル) 2007年 11月号 [雑誌]
 昼休みに、今日発売の「エル・アターブル」を妻のために(私も楽しみにしている)買うために書店へ行く。
 首尾よく最新号を買ってから、ふと新刊コーナーを見ると、平積みになっている単行本が目に留まった。
 有栖川有栖著「女王国の城」。
 なんと、有栖川さんの「江神二郎シリーズ」(「学生アリス」シリーズともいうらしい)の、15年ぶりの新刊だっ!
 とんでもないものを見つけてしまった。
 もちろん即購入。
 有栖川さんの「江神シリーズ」は、私の大好きなシリーズで、長髪の学生探偵・江神二郎が登場する「月光ゲーム」「孤島パズル」「双頭の悪魔」の3作は、すべて読んだことがある(実は、もうひとつの、いわゆる「作家アリス」シリーズの本は読んだことがない)。
双頭の悪魔 (創元推理文庫)孤島パズル (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)月光ゲーム―Yの悲劇'88 (創元推理文庫)
 「月光ゲーム」は、1988年のキャンプ地での事件の物語で、緻密な推理のミステリでもあり、かつなんとも甘酸っぱい青春ミステリでもあって、同じ頃に大学生だった私は(形は違えど学生キャンプに行っていたので)非常に深く共感と感動を覚えた、大好きな作品だ。大学の友人でキャンプ好きの(い)氏に薦めよう薦めようとずっと思ってて、つい薦めそびれてしまった記憶がある。(と書いているうちにすごく読み返したくなってきた)
 続く「孤島パズル」は後味が悪くてあまり好きではなかったが、3作目の長大な「双頭の悪魔」はものすごく複雑で完璧な物語構成とトリックが素晴らしくて、私にとってはこれまた不朽の名作である。こんなに素晴らしく完璧な推理小説は、他にあまり見たことがない。
 それでも、それから15年もたってしまったのだから、もうこのシリーズの新作が書かれることはないだろうと思っていたので、今回の新刊は本当に驚きだった。しかも、嬉しい驚き。
 さっそく帰りの電車で読み始める。朝には予想だにしなかった展開(?)だ。本の分厚さが、「双頭の悪魔」に匹敵するような長さを感じさせてくれて、ワクワクする(物語が長ければ長いほど嬉しい私です)。「双頭の悪魔」から15年後に出た作品だが、物語ではほんの半年後の設定のようだ。すでにレトロな感覚……(笑)。

(ここ数日、晴れた空を見ていないなあ。写真のような素敵な秋空と夕焼けが、早く見たいものです。写真は昨年の10月2日に撮影)