秋山先生のこと

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出会いのコラージュ―秋山光和随想集
 夜、美術史家・秋山光和(あきやまてるかず)先生の訃報に接する。
 秋山先生は日本美術史研究に大きな足跡を残された方で、美術品をエックス線や赤外線で調査する研究方法を確立された功績で知られる。今でこそ当たり前のように工学的研究がなされる美術史界だが、当時は非常に斬新な調査方法であっただろうことは想像に難くない。また、日本の美術史界の育成や日本美術の海外での紹介にも努められた方でいらっしゃった。京都の名家に生まれ(かの堀口大學は叔父に当たる)、フランス留学の経験のゆえもあって、非常に優雅かつダンディな方としても知られた。

 と、敬語を使い「秋山先生」と当たり前のようにお呼びしているが、私自身は残念ながら先生に師事したことはない。私は西洋美術史の専攻だったし、そもそも大学も違うし年代的にも違いすぎる。
 それでも、ここで特に記しているのは、私の家族(特に父方の祖母と父)が秋山先生及びご家族と個人的に親交があり、長きにわたって大変親しくお付き合いさせていただいていたからだ。そもそも祖母が金沢でお茶の店を営んでいた頃(もちろん戦前)から先生のお父上と親交があり、東京に移住する際にも、秋山先生が住まわれていた下北沢の近くで住みたい、と下北沢周辺で家を探して居所を定めたほどだと聞いている。その後も、先生を初め、日本画家・前田青邨のご三女でこちらもとても優雅な奥様や、ご家族の方々とのお付き合いは現在まで続いていた。私が2004年に開いた初めての作品展の折には、秋山先生がご夫妻でいらしてくださって、先生は特にMacを使ったスライドショー作品に強く興味を示されていたのを記憶している。
 日本の美術史界にも、そして私の家族にも、大きなしるしを残された秋山先生。ここに記してご冥福をお祈りいたします。
(写真は3月7日に、銀座にて撮影)