読書だけ快調

studio_unicorn20090427

黒のトイフェル 下 (ハヤカワ文庫 NV シ 25-5)黒のトイフェル 上 (ハヤカワ文庫 NV シ 25-4)
 一日たっても周期的な腹痛はおさまらず、熱もまだあるし節々が熱っぽく痛む。今日は仕事へ行くつもりだったが、あきらめて朝イチから医者へ。「ウィルス性腸炎」と診断される。ここ数日世間を騒がせている新型インフルエンザではありませんでした(安堵、っていうより心当たりまったくないし)。薬をもらい、食餌療法の指導を受ける。
 とにかく熱っぽくてだるいので、薬を飲んでお腹に優しいごはんを食べる他は、一日中ベッドに入ってうとうとしたりボーっとしたり。でもそれだけでは時間をもてあましてしまうので本を読む。時間があるおかげで、皮肉にも読書スピードだけは快調。下巻を読み始めたばかりの「黒のトイフェル」を最後まで読み通してしまった。
 超大作「深海のYrr(イール)」がすごく面白かった(2008年6月19日の日記参照)ドイツ人作家フランク・シェッツィングFrank Schätzing(Frank Schatzing)の小説で、しかも中世13世紀のケルンが舞台の冒険サスペンスとあって、中世ヨーロッパ好きの私はすごく期待していた(2月9日の日記参照)のだが、期待に違わずとても面白い物語だった。
 中世ドイツの世界を、当時の人々のものの考え方や精神性・宗教観なども含めて、物語の中で生き生きと甦らせてくれたのがまず素晴らしい。当時の大聖堂建設が、今の高層建築の建設と違って、いかに人々に大きな影響も与えていたことか。宗教や建築や芸術と政治が、いかに密接に結びついていたか、というより渾然一体としていたか。そして、ケルンの街の象徴ともいうべき大聖堂建設に絡む巨大な陰謀、キリスト教世界に深い影を落とす十字軍の傷跡、魅力的な登場人物たち、恋と冒険……エンターテインメント小説としても素晴らしい。ヨーロッパの作家ならではの、きちんと教養小説の要素を盛り込みながら娯楽小説を作り上げている、その創作姿勢が実によい。
 私はドイツにはあまり足を踏み入れたことがなく、ケルンに至っては行ったことすらない。が、さすがにこの小説を読んで、ちょっとケルンに行ってみたくなった。かの大聖堂も、いつかこの本を読み返しながらじっくり眺めてみたいものだ。
(写真は昨日、自宅にて撮影)