マイケル・ケンナ写真展

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MICHAEL KENNA「HOKKAIDO」?マイケル・ケンナ写真集
 降りしきる雨の中、妻と一緒に恵比寿の東京都写真美術館へ行く。ここで6月25日まで開催中の、マイケル・ケンナMichael Kennaの写真展"IN JAPAN"を観るためだ。
 タダ券ではない。心の底から観たくて、雨の中わざわざやってきたのだ。何しろマイケル・ケンナ氏の写真展である。私にとっては、バルラハやカルティエ財団どころではない、もっともっと大切な、私の本当に本当に大好きな作品を作る写真家だ。その、微妙な陰影に彩られたモノクロの風景写真はどれも、すでに単なる"記録"を大きく超えて、凡百の写真家には到達し得ないような揺るぎない静謐の世界に到達している。他の全ての展覧会を逃しても、ケンナ氏の写真展だけは絶対に逃せない。比較するのも畏れ多いが、私が作る平面作品でも、もっとも影響を受けている作家を挙げるとしたら、マイケル・ケンナ氏を置いて他にいないだろう。なかなかあの、凛とした静謐の領域には到達できないが(笑)。
マイケル・ケンナ写真集 レトロスペクティヴ2 MICHAEL KENNA A TWENTY YEAR RETROSPECTIVE―マイケル・ケンナ写真集
 私が持っているケンナ氏の写真集は、"A Twenty Year Retrospective"(私のレビューあり)と"Retrospective Two"(私のレビューあり)の2冊、いわばベスト盤みたいな本だが、氏の軌跡が俯瞰できる2冊だ。どちらも素晴らしいのだが、そこは印刷物、やはりオリジナルプリントを直に観ることには及ばない。
 今回の作品展は、ケンナ氏が近年もっとも力を入れている、日本の風景を撮影したモノクロ写真だけで構成されている。特に、北海道の雪原と、海や湖のほとりを撮影した作品が圧倒的に多く、素晴らしい。いくつかの作品は、もはや抽象画か禅画のような境地。人間ドックで受けた心の疲弊を、多少なりもと慰めてくれたような心地がする。本当に、雨の中をわざわざ来た甲斐があった。北海道を写した新作が収録された、限定版の写真集も購入できたし(高かったけれど、自然木が表紙に使われていて素晴らしい装丁、もちろん中身も素晴らしい)、大満足。

(画像は、2003年7月にノルウェーソグネフィヨルドで撮影した写真を、なんちゃってケンナ風に加工。といっても共通点はモノクロというくらいで、ケンナ氏の作品とは似ても似つかなくなってしまった)