プラチナプリント

studio_unicorn20070223

 仕事のお昼休みを利用して、神保町のギャラリー「gallery福果」にて開催されいてる、「小林伸幸プラチナ写真展〜自然画」を観てきた。
 自然の風景や事物を撮影したモノクロやセピアの写真が、小さなギャラリー内に整然と展示されている。どの写真も深遠な佇まいが感じられ、観ている私も深く落ち着いたような気持ちになる。深い諧調表現が素晴らしい。
 この諧調表現の深さは、プラチナプリントという技法によるもののようだ。プリントの際に、銀塩の代わりに貴金属のプラチナを用いるのだそうだ。実は写真の黎明期の技法らしい。なるほど、銀塩プリントにはあまり感じられない、細かく微妙な諧調表現だ。
 ただし、プラチナプリントはネガの拡大プリントができないらしく、フィルムと同寸のプリントしかできない。そのため、8インチ×10インチという超大型カメラで撮影しているそうだ。会場には、そのカメラの現物が展示されていた。ものすごくデカかった。こんなカメラを担いで野山を歩くだけで、ものすごい重労働だろうなあ。
 さらに、写真をプリントしている紙が特筆に価する。和紙を使用しているのだ。それも、「細川紙」という、江戸時代から変わらぬ技法で作られている和紙。化学薬品等を一切使わず「1000年の年月を経年変化を起こさずに生きる紙」だそうだ。この、ちょっとベージュがかった紙にプリントされているおかげで、水墨画を思わせる、懐かしく温かい雰囲気が写真に加わり、プラチナプリントと絶妙なハーモニーを醸し出している。素晴らしい写真だ。私も、機会があったら、自分の作品を和紙にプリントしてみたいものだ。
 作者の小林伸幸さんは、普段は広告や雑誌で活躍するフォトグラファーらしい。世界中を巡って、カラーの人物写真などを撮る一方で、このような自然写真を腰を据えてじっくりと制作しているようだ。
 この写真展は3月3日まで開催しています。観る価値あり、です。

(画像は、小林さんの写真……ではなくて、私の未発表作品より。"patronage"の一部)