そして灰と雪

studio_unicorn20070526

 よく晴れて青空が広がり、湿度も低く素晴らしい一日。毎度書くようだがこのような気候の日のまま9月まで続いてくれれば、私も今より何百倍も夏が好きになるのになあ。
 妻とお台場へ行き、かねてより観たかったノマディック美術館Nomadic Museumのグレゴリー・コルベールGregory Colbert作品展"Ashes and Snow"を観る。
 幸運なことに、さる筋より、この展覧会のタダ券をいただくことができた。すごく観たかった展覧会とはいえ、入場料が1,900円とバカ高いので、なんとも嬉しい限りだ。
 さらに幸運だったのは、会場の売店で売られている16,800円のカタログ作品集を買うと、なんと6,800円のDVDと、ポスター、シールがついてくるという、明日まで限定のサービスが行なわれていたこと。かねてよりカタログとDVDのバカ高さに悩んでいた(すごく欲しいのに)身としては、なんとも思いがけない幸運。カタログとDVDだけでも合計すると23,600円するところを、16,800円だけで手に入るなら、買わいでか! というわけで購入しました(笑)。それにしても、そんなすごいサービスをしてまで販売しているってことは、よほど売れてないんだろうなあ、カタログもDVDも。おかげで得させていただいたわけだが(笑)。ちなみに、音楽も素晴らしかったのでサントラCDも購入した。
Ashes And Snow New York Exhibition Catalog: March 5-June 6, 2005, The Nomadic Museum, Pier 54, New York City
(右の画像は、Amazon.co.jpで扱われているNY版で、今回の東京版とは別物です)
 さて、まずはこの展覧会のためだけの移動式美術館=ノマディック美術館。さすがリサイクル建築の第一人者・坂茂氏が手がけただけあって、既存のコンテナが積み上げられて建物を形作っている(写真)。柱は坂氏お馴染みの、頑丈なぶっとい紙管で、コンテナの隙間と天井を布が覆っている。さらに、入り口と出口の垂れ幕は、使用済みのティーバッグを大量に繋いで作ったもの。会期が終わると、解体されてコンテナは元の持ち主へ返却され、他の部材もほとんどゴミにならないらしい。あるべき建築のひとつの姿がここにあるなと、とても興味深かった。
 そして、肝心のコルベール氏の作品。今までも雑誌などで目にしてきた、人間と動物が静かに触れあう、なんとも神秘的で神々しく、時に微笑ましい写真たちが、とてつもない大きさに引き伸ばされ、和紙に印刷され、静かに展示されている。その大きさに、各作品の持つ神秘性が大きく増幅され、迫力と静謐と永遠性を同時に兼ね備え、見るものを圧倒する。これはすごい。じっくりと作品の前に佇み、心ゆくまで作品と対峙する。素晴らしい体験だ。大きく引き伸ばされているので、写真の粒子がかなり拡大され、作品によってはざらりとしたタッチの絵画のようにも見えてくる。
 さらに、コルベール氏が制作した映像作品も3点、この広い会場ならではの大スクリーンに上映されている(うちひとつは60分もある)。永遠に時が止まったような写真作品とはまた違い、ゆったりとした詩的な、動物と人間の交流が描き出されている。映像に合わせて流れる音楽も、どれも素晴らしいものばかりだった(元Dead Can DanceのLisa Gerrardなんかも参加していたりする)。
 これらの写真や映像は、一切の合成処理などはしていないそうだ。となると、これだけの完成度の高い作品を作るには、非常に大掛かりなスタッフと準備と、よく訓練された動物たちが必要だったに違いない(もちろん膨大な忍耐力も)。コルベール氏の創作に向かうエネルギーの大きさも感じさせる作品たちだった。
 う〜ん、期待に違わず、とても堪能させられた展覧会だった。満足。