感性と経験の旅路

studio_unicorn20090211

 肌寒い曇り空の祝日。
 妻と一緒に自転車で砧公園に行き、世田谷美術館で開催中の展覧会「十二の旅:感性と経験のイギリス美術」"Twelve Travels: British Art in Sensibility and Experience"を観る。「旅」をテーマに12組の英国出身もしくは英国在住のアーティストの作品を展示した展覧会だ。
 何せ「旅」がテーマだし、英国好きの私だし、それに「感性と経験」なんて、いかにも合理主義と情緒性が同居して矛盾することのない英国人の心性を表現しているではないか、と、かなり気になっていた展覧会だったのだ。タダ券で観られてラッキー。
 作品が展示されていた作家は、以下の12組。
J.M.W. TurnerJohn Constable's Skies: A Fusion of Art and Science

  • ジョゼフ・ターナー J.M.W.Turner
  • ジョン・コンスタブル John Constable
  • チャールズ・ワーグマン Charles Wirgman
  • バーナード・リーチ Bernard Leach
  • ヘンリー・ムーア Henry Moore
  • ベン・ニコルソン Ben Nicholson
  • デイヴィッド・ホックニー David Hockney
  • アンソニー・グリーン Anthony Green
  • ボイル・ファミリー Boyle Family
  • モナ・ハトゥーム Mona Hatoum
  • アンディ・ゴールズワージー Andy Goldsworthy
  • デイヴィッド・ナッシュ David Nash

Andy Goldsworthy: A Collaboration with NatureEnclosure: Andy Goldsworthy
 それぞれに異なる「旅」が、作品を通じて呈示される。なかなか見応えがあって楽しめた展覧会だ。
 ターナーとコンスタブルは版画による風景画が主に展示されていたが、特にコンスタブルの版画はこってりした粗いタッチがいい感じで、とても気に入った。やっぱり英国の(特に田舎の)風景は好きだなあ。英国には毎年でも行きたいものだ。
 日本とのつながりの強さで選ばれたであろう作家も多く、古くはワーグマン、リーチから最近のナッシュ、ゴールズワージーまで。ホックニーも日本がらみの作品が出ていたし。その中でも、やっぱり私が大好きなのは、人工物は一切使わず、自然にある素材のみを用いて作品を作るゴールズワージー氏の作品。かつて同じこの世田谷美術館で開かれた彼の回顧展は、本当に素晴らしかったなあ。ゴールズワージーと近い系統のナッシュ氏の自然木を使った作品と、どことなく雪舟水墨画を思い出させる「旅の絵日記」が、こちらもとてもチャーミングですごく気に入った。
Boyle Family
 ボイル・ファミリーについては、寡聞ながら全然知らなかった。夫婦+2人の子どもの4人で、広げた世界地図にダーツを繰り返し投げて地上の一点を決定し、その地表を183cm四方ぶん、実物大に正確に再現した作品を作る、という極めてユニークな制作活動をしてきたという。いや、これは面白いぞ。ただ眺めているだけでも相当に面白い。そして普段何気なく踏みしめている地面についてや、この地球の地表が実にさまざまな様相のヴァリエーションを持ち合わせていることについて、思いを馳せる。彼らの他の作品ももっと観てみたいものだ。
 図録こそ実に平々凡々としてイマイチ魅力を感じなかったので購入しなかったが、展覧会そのものは非常に興味深かった。こういう、企画の意図がきちんと観客に伝わって充実している展覧会というのはいいよね。

(写真は、英国・ソールズベリSalisburyにて。2008年9月10日撮影)