建築がみる夢

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建築がみる夢
 今日は仕事を休み。一日家にこもって作品制作をするつもりだった(なにしろまだ何一つ作っていない)のだが、すがすがしく広がる青空(写真)に誘われて、午後は妻と自転車に乗って外出してしまった(笑)。
 というわけで砧公園内にある世田谷美術館へ行き、開催中の「建築がみる夢 石山修武と12の物語」展を観る。美術館に着く頃から突然雨が降り始め、けっこうな大雨になってちょっと心配したが、出る頃には止んでいた。ラッキー。
 石山修武(いしやまおさむ)さんの名前やその仕事は寡聞にして存じ上げなかったし、展覧会も建築好きだしタダ券があるから、くらいの軽い気持ちで観たのだが、なかなか充実した内容で、とても面白く観ることができた。
 どうも、よくマスコミに登場する建築家の方々とは少々違い、石山さんの仕事は、特定の資本やゼネコンと結びつかず、何かひとつの建物を作るというよりは、周辺の環境の中に組み入れられたある"共同体"や、場合によっては"環境"そのものを構想するという性格が強いように思う。その極致が、築50年の自邸を少しずつ改装し、屋上や周辺に菜園を作り、徐々に徐々に手作りで進められている(現在も進行中)「世田谷村」のプロジェクトだろう。
 会場内には、その「世田谷村」を始め、進行中または構想中の12のプロジェクトが、模型・パネル・スケッチや構造体の一部などを使って、縦横無尽に立体的に展示されている。特によく仕上げられているミニチュア模型がすごい。「浅草計画」の模型は細部までよく作りこまれていて、これだけで"作品"と呼べるほどのものだった。さらに、膨大な量のスケッチにも圧倒される。中には水墨画のような概念図やお酒を飲む人や落書きのような、一見計画のデザインと関係なさそうなスケッチも。これらは、"精神面"で計画に寄与しているのか。
 さらに驚いたのは、会場の一角に石山さんの臨時オフィスがもうけられ、石山さんご本人とスタッフたちが、まるで日常の延長のように(実際日常の延長なのだろうが)電話したり模型作ったりと仕事をしていることだ。石山さんは展覧会期間中、頻繁に(ほとんど毎晩)ここで講演会を開催しているそうで、それならいっそ仕事場も、ということだろうか。観ている我々と隔てるものは何もない。今この瞬間にもプロジェクトが進行し、プロダクトが生み出されている。石山さんの"夢"の現在進行ぶりがダイレクトに伝わってくる、実に面白い試みだ。
 2冊分冊がひとつの箱に収まっているカタログの装丁も素晴らしい。もちろん購入しました。