クマグスの森

studio_unicorn20080127

 まだ薬を飲んでいる状態だが歯肉の痛みや腫れもだいぶ治まってきたし、ちょっとは気晴らしに外出もしてみたいので、妻と一緒に渋谷へ行き、そこから表参道まで歩く。
 神宮前のワタリウム美術館で開催中の「クマグスの森」展のタダ券があったので、ちょっと観てみようと思ったのだ。
 現代美術などを多く紹介するこの美術館にしては、珍しい企画である。生物学・民俗学・思想などなど、とても分類などしきれないほど幅広く活躍した、明治〜昭和初期の"知の巨人"南方熊楠の人物や業績の一端を紹介する展覧会だ。そのためか、来館している人々の年齢層もいつもより高めのようだ。
 この美術館の常として、会場は3フロアに分かれており(ひとフロアがけっこう狭い)、まず4階は、南方熊楠の早熟な少年時代や、米国から英国へと放浪した青年時代の資料などを展示。続く3階は、「熊楠の頭の中を覗く」というコンセプトで、多方面にわたった思想や研究の足跡を、資料などを使い紹介。そして最後の2階は、(ここが今回の目玉か)熊楠が描き残した膨大なきのこ図譜の展示や、粘菌研究の成果などが紹介されている。
南方熊楠 菌類図譜クマグスの森―南方熊楠の見た宇宙 (とんぼの本)
 このきのこ図譜以外は、展示にヴィジュアル要素が乏しいため(特に3階)、びっしりと文字で埋め尽くされたパネルを丹念に読まないと展示概要がつかみにくい。視力が非常に悪い私などには、正直ツライ。なので、たまたまギャラリートークの時間に行き当たって、展示のコンセプトについて耳で聞けたのは手っ取り早くて助かった。「熊楠の頭の中を覗こう」という企画自体は面白いのだが、もう少しヴィジュアル的に分かりやすく紹介してほしかったぞ。いつも思うのだが、この美術館、企画の対象や意図は面白いし、実によくリサーチしているなとその勉強熱心さには感心するのだが、展示方法や見せ方がイマイチこなれていない。分かりやすく見せようという配慮がもう一歩足りないのだ。まあ、スペース的に制約の多い美術館なので、難しい話ではあるのだが。
 ただ、「南方熊楠という人とその研究・業績についてもっと知りたい」とは思わせてくれる展覧会だったのは間違いない。まずは、どんな本を読むのがいいのかな。

(写真は表参道にて)