激テクギターデュオ

studio_unicorn20080414

激情ギターラ!(初回生産限定盤)(DVD付)
 ここのところギターづいています。
 先週末にHMVで購入したCDの一枚、ロドリーゴ・イ・ガブリエーラRodrigo Y Gabrielaという、アイルランドを拠点に活動するメキシコ人のナイロンストリングス・ギターデュオのアルバム"Rodrigo Y Gabriela"。店頭で試聴して一発でものすごく気に入り、即購入を決めたCDだ。
 メキシコ人のアコースティック・ギター2人組というと、ついフラメンコやいわゆるラテンミュージックをやっているのかと思ってしまうかもしれないが、彼らの演奏を聴いてから、なおそう思う輩がいるとすれば、よほど耳垢がたまっているのか、あるいは物事の表面すら見えない(見ようとしない)大馬鹿者と言うしかない。それほどに彼らの音楽は独特なものだ。彼ら自身もアルバム・スリーブのクレジット欄に、はっきりと次のように書いている。

A lot of people, when describing our sound, say we play Flamenco. We don't. We blend a lot of styles into our playing, but this area of music is not one of them.
(アルバム・スリーブのクレジットに記載されたノートより)

 もちろん、ナイロンストリングスのギターをかき鳴らす以上、フラメンコやラテン音楽の要素も多分に入っている。が、(私はジャンル分けほど無意味なものはないと常々書いているが)敢えてひとつのジャンルに彼らの音楽をムリヤリ押し込めるとしたら、これはもう「ロック」しかない。何しろ、メキシコでは彼らはヘヴィー・メタルのバンドを組んでいたのだから。DVDの中でも「自分たちの音楽の根源は80年代スラッシュ・メタルだ」とはっきりと言っている。ジャズっぽいアドリブを嫌ってフレーズやリズム・パターンを作りこむのも、完全にロック・スタイルの曲作りだし。このアルバムにカヴァーが2曲収録されているのだが、それがレッド・ツェッペリンの名曲"Stairway To Heaven"(「天国への階段」)とスラッシュ・メタルメタリカの曲"Orion"だというのが、彼らの音楽的姿勢を端的に物語っているように思う。
 彼らの演奏はホントーにカッコイイ! 大雑把にメロディーを担当するロドリーゴRodrigo Sanchezが正確なピッキングでメタル並みの激弾きソロを聴かせる一方で、リズム担当のガブリエーラGabriela Quinteroが驚異的な手首の柔らかさでもって、コードをかき鳴らしながらギターを叩き、複雑なリズム・パターンを作り出す。そのコンビの一糸乱れぬこと! そして、何かパーカッション楽器が使われているのかと錯覚してしまうくらい、彼らの演奏はパーカッシヴな音に満ちているのだが、それらの音は全てギターをさまざまに叩いて出しているのだ!(もちろん弦を弾きながら) 本当に、たった2本のギター(しかもナイロンストリングス)だけで、こんなに複雑で豊かでロック魂に満ちたカッコイイ音楽を作り出せるなんてスゴイ。しばらくヘビロテになりそうだ。
 それにしても、彼らがメキシコを出てやってきたのが、フォークミュージックの聖地・アイルランドのダブリンだったというのが、本当に幸運だったのだなあとつくづく思う。ヨーロッパ(しかも北欧中心)の自由な気風の中で活動したことによって、今の独自のスタイルを作り上げるのになんら制約をもたらさなかったのだろう。これが間違って米国なんかに行ったりしちゃったら、既成のジャンルの枠に押し込められるか意味もなくヴォーカルと組まされて使い捨てられて終わり、なんてことになっていた可能性大だったよなあ(日本だってそうだ)。これだけ雄弁な2本のギターがあるのに、どこに歌を入れる必要があるっていうんだ?
 日本の初回盤にはDVDがついているが、彼らのライブ映像が多数入っており、彼らがどんな風に演奏しているかを目で見ることができるのがまた興味深い。さらに、彼らがこれまでのヒストリーを語るインタビュー映像や、自分たちの曲をどのように演奏しているかを解説するチュートリアル映像まで入っているのが面白い。今からこのアルバムを購入する人には、ぜひともDVDつきの盤を買うよう強く勧めたい。「激情ギターラ!」という日本盤のタイトルだけは、ちょっとヒドすぎて受け入れがたいが(苦笑)。
 つい先日来日したばかりだったらしい。残念〜。久々にライブの演奏を直に見たいと思わせるミュージシャンだな。次に彼らが来日してライブする機会があるなら、ぜひぜひ観に行きたいものだ。

(写真は4月12日、外苑前〜表参道界隈にて撮影)