悲運の王妃とその妹

studio_unicorn20081129

Other Boleyn Girl (Score)
 昼間の所用のあとに、夕方頃妻と渋谷へ行き、Bunkamuraル・シネマにて映画「ブーリン家の姉妹」"The Other Boleyn Girl"を観る。
 ナタリー・ポートマンNatalie Portmanスカーレット・ヨハンソンScarlett Johanssonが初めて共演する映画ということで、ずいぶん前から騒いでいた(2007年11月29日の日記今年7月3日の日記など参照)映画だったのだが……。
 うーん、期待したほどではなかったな〜。ちょっと残念。
 数日前にフィリッパ・グレゴリーPhilippa Gregoryによる原作本(11月10日の日記参照)を読了していたのがいけなかったか。文庫本2巻にわたる長大な小説を2時間弱に押し込めるのは、さすがに無理ありすぎだったな。未読だったらまた印象が変わったのかもしれないけれど、読んでしまったのだから仕方ない。とにかく"駆け足で話をなぞりました"感ばかり先に立ってしまい、原作の改変と端折りばかり目立ってしまった。ダイジェストなうえに、エピソードの活かし方がよくないものだから、ひとつひとつの策略や出来事にはちゃんとした経緯や理由があったのに(原作を読めば分かります。笑)、こんな端折り方では、ブーリンやハワードの一族の連中が単なるおバカさんに見えてしまう。おいおい。視点をうまく絞って成功した「マリー・アントワネット」には遠く及びませんでした(2007年1月27日の日記参照)。
ブーリン家の姉妹 1  上 (集英社文庫)ブーリン家の姉妹 1  下 (集英社文庫)
 原作では冷酷で冷徹だった姉妹の母親が、映画では妙に"いい人"になっていたのも気に入らないし、同じく原作ではとても魅力的に存在感を際立たせていた姉妹の兄のジョージも、(映画では弟だった)登場場面を大幅に削られて存在感が薄くなっていたのも非常に物足りない。その他にも、原作では見事に表現されていた中世英国の人々の心性が、映画では全然感じられず、原作のいいところが全然生かされていなかった。いくら「映画と原作は別物」とは言ったって、原作を挙げている以上は、もう少し"生かす"べきだったんじゃないの!? というわけで映画はあまりお薦めしないけれど、原作のほうは大推薦!です(笑)。
 肝心のナタリー・ポートマンスカーレット・ヨハンソンの共演も、あまり印象に残らなかったな〜。あまり2人の演技が"ぶつかり合う"場面が少なかったからかな。もう少し2人の見せ場が欲しかった(これも原作でかなり期待していた、というのもあるな)。かえってヘンリー8世を演じたエリック・バナEric Banaがカッコよすぎて、どんなひどい仕打ちをしてもカッコイイままなのが妙に印象に残ってしまった(笑)。"むごい王"になりきれていないとも言うか。
 まあそれでも、当時の英国宮廷の仕来りや豪華な衣装・儀礼などを見られたのはよかったし、英国の中世の描写(特に田舎!)は素晴らしい。荘厳な音楽も良し。それだけに残念。あ〜もったいない。あと上映時間が3倍くらい長ければ、きっと満足できる内容になっていただろうな(ってさすがにムリ!?)。

(写真は、英国コッツウォルズのカースル・クームCastle Combe、"The Manor House"にて。9月10日撮影)