公爵夫人

studio_unicorn20090523

The Duchess
 晴れた土曜日。日中はけっこう蒸し暑くて汗をかいたが、夕方から湿度が下がり、ずいぶんと涼しくなって気持ちよい。
 午後は妻と渋谷に出たが、新型インフルエンザもなんのその。渋谷はいつもどおり大勢の人で溢れていて、マスクをしている人も非常に少ない。その光景に、なんだかホッとしてしまった。
 夕方からは、Bunkamuraル・シネマにて、映画「ある公爵夫人の生涯」"The Duchess"を観る。
 以前書いたように(3月26日の日記参照)、原題が"The Duchess"なんだから「ある」だの「の生涯」だのと金魚の糞みたいにダラダラつけずに、ズバリ「公爵夫人」でいいじゃないか、日本の配給会社の担当者のセンスを疑うだのと思ったり、妙に故ダイアナさんとのつながりを強調したり「スキャンダル」を強調したりする宣伝方法がものすごくうっとうしく感じたり(英国史に馴染みのない日本人の注目を集めるためには必要なのかもしれないが)と、観る前の印象がイマイチよろしくはなかったが、実際に観終わってみると、同じ英国史劇だけれども期待外れで残念な映画だった「ブーリン家の姉妹」(2008年11月29日の日記参照)に比べれば、はるかに面白く、後味の良い映画だった。
 貴族社会の因習や制度の中で苦しみつつ生き抜いたジョージアナを演じたキーラ・ナイトレイKeira Knightleyの力のこもった演技(それでも、彼女は痩せ過ぎだな。顔なんか"馬"一歩手前になりかかっている気がした)も素晴らしいが、実は同じく制度や因習に苦しんでいたデヴォンシャー公爵を非常に抑制の効いた演技で見事に演じていたレイフ・ファニンズRalph Fiennesも素晴らしかった。最後まで観れば分かるのだが、これは単純な善悪とか良し悪しで切れる話ではなく、実に「許し」と多分に「成長」の物語(誰にとっても)であったのだ。それ故に後味の良いエンディングに仕上がっていたことを、高く評価したい。
 そしてもちろん、これでもかと画面に映し出される英国の素晴らしい風景! オール英国内のロケで、都市も建物も田舎も美しく、素晴らしい。歴史ものを撮影できる場所に事欠かないのが、英国のいいところだな。ロココ文化華やかなりし頃の貴族の豪奢な生活や衣装も素晴らしい。さらに、レイチェル・ポートマンRachel Portmanによる音楽がまた、クラシカルかつエモーショナルでとてもよく、非常に映画に合っていた。サントラ買うかな。

(写真は、英国コッツウォルズのカースル・クームCastle Combeにて。2008年9月9日撮影)