最新の考古学の成果

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旧石器・縄文・弥生・古墳時代 列島創世記 (全集 日本の歴史 1)
 「全集 日本の歴史」(小学館)の第一巻、旧石器・縄文・弥生・古墳時代を扱った「列島創世記」を読了した。この第一巻が出たのは昨年の11月だったから、刊行後1年を経てようやく読んだことになる(全集自体の刊行は、もう13巻まで済んでいる)。
 実はこの全集、最初は購入するつもりはまるでなかった。歴史大好きな私であるのだが、どちらかというと世界史、特にヨーロッパ史(とりわけ中世・ルネサンス)に興味の対象が集中しているので(高校での選択ももちろん世界史だった)、日本の歴史か〜どうしようかなと、イマイチ食指が動かなかったのだった。
 それが、結局第一巻を購入して全巻予約もしてしまった最大の理由は、なんといっても、原研哉さんのディレクションによる装丁の素晴らしさ。以前より原研哉さんのデザインの大ファンである私だが(2007年10月29日の日記参照)、この全集の装丁も、白を基調としたミニマルなデザインや、手触りや質感を重視したカバーの用紙選択など、とても品格があって凛としたデザインが本当に素晴らしい。全16巻のうち3冊の“新視点”の巻だけが白以外の色カバーになっているのも、全体の構成を考えた非常に心憎い配慮だ。
 この素敵な装丁だけでも十分に買う価値があるというものだが、今回第一巻を読んで、内容も非常に面白いものだということを実感した。この巻は、人類の発生から巨大古墳で頂点を極める前文字文化の4万年の歩みを、考古学者・松木武彦さんが、心の科学を取り入れた「認知考古学」を多用した最新の考古学の成果に基づいて、とても平易でわかりやすい記述で描き出してくれる。物質資料(出土品などの考古資料)のみを参照しているので、歴史的固有名詞を一切使っていないのも斬新だ。邪馬台国卑弥呼についても、わずかにコラムでちょっと触れている程度だ。社会システムの変遷・環境変動との関わり・そして「日本」という枠組みに囚われない(古代人がそんな枠組みを持っていた訳はないよね、考えてみると)列島の古代像が、学校で(しかも駆け足で)教わった程度の知識しか持たない身としては、非常に興味深くかつ楽しく、遥か古代人たちの暮らしぶりのイメージが頭の中に浮かんでくるような錯覚を覚えたほどだ。
 内容もこれほどまでに面白いとは、この全集、第二巻以降もとても楽しみになっていた。早く読まねば。
(写真は、京都・上賀茂神社にて。今年の5月2日撮影)