神代もきかず龍田川

studio_unicorn20090109

 末次由紀さんのまんが「ちはやふる」にハマっている。
 年末頃から、書店で単行本が平積みされているのがずーっと気になっていたのだが、先週1月3日に現在出ている1〜3巻をまとめ買いし、その日のうちに一気に読み干してしまった。妻も数日のうちに3巻まで読破した。それから一週間、何度も読み返している。
 すごく面白いのである。
 このまんがは、百人一首の「競技かるた」を描いた物語。私が小学生の頃、けっこう百人一首が得意だったのは以前に書いたが(2006年12月20日の日記参照)、さすがに「競技かるた」となるとまったく縁がない。競技かるたは、ある意味「スポーツ」の世界なのである。
 というわけで題材は異色でも、物語としてはスポーツものの王道セオリー(努力・友情・勝利とか、因縁の対決とか)をきっちり踏まえていて、ぐいぐい読み進めてしまう。取材が丁寧になされている成果か。キャラ立ても古典的ながらうまく効いているし、主人公・千早だけでなく太一と新、さらに他の人物たちへと世界を広げてゆくのもよい。

 もちろん千早・太一・新の3人の、かるたで築かれた絆&そこはかとない三角関係も、題材の「百人一首」らしく繊細かつ丁寧な心理描写で、実に読ませてくれる。初めの1巻と少々を費やして、3人の(あとから振り返ると黄金時代に見えてしまう)小学生時代を描いて3人の絆をしっかり印象付けてから、(こちらが本編であろう)高校生時代へ持ってゆくというやり方も、ちょっと以前のスポーツまんがでは必ず使われていた「王道」路線で、物語に骨太な骨格を与えている。誰にでもオススメできる、とても面白いまんがだ。早くも先の展開が気になってしまう。
 主人公・千早の名前にちなんで、「ちはやぶる〜」の歌&札が物語の最重要札として随所に出てくるが、これは私が一番得意な2つの札のうち一枚で、そこも大いに好感が持てる。

ちはやぶる 神代もきかず龍田川
    唐紅に 水くくるとは
               −在原業平

 ちなみに、私が得意なもうひとつの札は業平の兄・在原行平の歌、

立ち別れ 因幡の山の峯に生ふる
    待つとし聞かば 今帰りこむ
               −在原行平

である。
 在原兄弟のこの2枚は小学生の頃からホントに大好きで、絶対に取れる自信があったものだ。懐かしい。久しぶりにかるたをやってみたくなったぞ(もちろん競技かるたではないけれど)。誰か百人一首かるたをやりに、我が家へ来ませんか?
(写真は京都・上賀茂神社にて。2008年5月2日撮影)