ラットマン

studio_unicorn20090127

ラットマン
 道尾秀介さんの小説「ラットマン」を、本日読了。
 実は道尾さんのことは寡聞にして全然知らず、もちろん作品も読んだことがなかったのだが、この本は例によって装丁買いだった(笑)。
 カバーイラストを手がけていたのが、私の大好きな牧野千穂さんだったのだ。そのイラストに惹かれて即座に購入してしまったのが、ほぼ一年前。それから約一年後に、ようやく読んだことになる。この一年の間に、道尾秀介さんは期待のミステリ作家としてすっかり有名になったものだ。
 この作品も、前半の閉塞感には少々閉口したが、先に読み進めさせる力はすごい。後半はほとんど一気読みだった。読みやすさと(惹句にあるとおりの)人間描写にこもる温かみのあるまなざし。その温かさのおかげで、読後感は悪くなく、何より「ミステリ」として一級品の仕上がりになっているのがいい。
 ラストの心の叫び、取り返せない時の流れに対する慟哭は胸に刺さる。私たちは本当に人を裁けるのか。
(写真は1月24日、多摩センターにて撮影)