ボリウッドからのファイナルアンサー

studio_unicorn20090506

スラムドッグ$ミリオネア
 連休最終日の今日も、昨日に続いて雨降りの一日。それでも、せっかくの連休最終日なので、がんばって妻と外出し、渋谷や六本木などに行ってみる。
 夕方には、渋谷で、前々から観たかった映画「スラムドッグ$ミリオネア」"Slumdog Millionaire"を鑑賞。アカデミー賞を総ナメした作品というよりも、ダニー・ボイル監督Danny Boyleの作品なので映像と音楽が面白そうだと気になっていた映画だった。
 いや〜、評判どおり。すんごく面白かったです。観る前は、英国人監督が直視するインドの現実とか、社会派映画なのかなとか想像していたのだけれども、全然そうではなかった。さすがダニー・ボイル監督、そんな上から目線の高慢でダサいことはしていませんでした。もちろん、貧困とか差別とかインドのさまざまな社会問題が、背景として浮き彫りにされてはくるのだが、物語のエッセンスとしてはほとんどドリーミーといってもいいくらいのラブストーリー、夢と希望がいっぱいのお伽噺(いい意味で)だった。ある意味娯楽に徹した監督の姿勢に拍手!だ。
 映画の舞台ムンバイ(ボンベイ)は、言わずと知れたインド映画産業の中心地、通称「ボリウッド」。この街にみなぎる溢れんばかりのパワーと色彩を浴びるように吸収し、映像技巧を駆使しまくって洪水のように画面にぶちまけた映像と音響・音楽のカオスが、とにかく素晴らしい。我々観客は、このめくるめく色彩と音の洪水を素直に浴びて、映画の世界にどっぷり浸かるのが正しいよね、この映画に関しては。
 もちろん、「ボリウッドジョン・ウィリアムズ」ことA・R・ラフマーンA. R. Rahmanの音楽がまた素晴らしい。インドの音楽の伝統を、西洋の技法と融合したボリウッド映画の音楽を、ここではさらに洗練させて、見事に映像と一体化させている。あまりにこの音楽を気に入ったので、映画館を出たその足でサントラ盤のCDを購入してしまったほどだ。ボリウッド映画お約束の「話の途中でいきなり歌と踊り」はさすがになかったが、その代わりというか、エンド・クレジットに素敵な歌と踊りのシーンが用意されていて、これがまた爽快。この映画のあと味をとてもいいものにしている。
 日本でも大人気だった「クイズ・ミリオネア」の番組を、特にライフラインなどの仕組みを巧みにストーリー上に配置して、話を盛り上げている脚本も秀逸。正直、そううまく都合のよい問題ばかり出るか〜?と思わないでもないが、そんな野暮な疑問は、このぎこちなくもピュアな「お伽噺」の"It is written."の前には、まったく無意味だろう。
 英国人監督が、インド・ボンベイという強烈なフィルターを通して作り上げた、素敵な映画の贈りもの。傑作!

(写真は、ボリウッドとは何の関係もない京都の招き猫。4月30日撮影)