青空の下で

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 8月11日は、くっきりと深い色の青空が広がる好日。

 気温こそ前後の日々のようにとても高く、降り注ぐ陽射しの暑さ自体は半端ない。だが心地よい風が終日よく吹いて湿度をかなり下げてくれたので、陽射しを避ければずいぶんとしのぎやすい。日陰に佇んでいると吹き付ける風が実に爽やかで、どことなく南イタリアを旅した時の、あの夏の日々を思い出させる。

 前後の日々が気温の高さと同時に湿度が非常に高く、連日蒸し暑かったことを思うと、この8月11日だけがなんともカラッとした暑さの日だったので、とても強く印象に残った。もしかしたら、今年の東京の夏で最高の一日だったのかもしれない。

 あまりに気持ちの良い日だったので、渋谷で前の週に完全リニューアルオープンしたばかりの、宮下公園こと「ミヤシタパーク」に行ってみた。

www.miyashita-park.tokyo

 

 山手線の線路沿いの薄暗い公園だった場所には3階建ての建物が長々と横たわり、屋上にガーデンが広がる。

 東京は世田谷の下北沢そばで生まれ育った私にとって、下北沢は自分ちの庭で電車で10分足らずの渋谷は、まあ一番近い「遊び場」だった。だからかつての宮下公園のことも小さい頃からよく憶えている。ハチ公前広場と明治通りという二つの渋谷の「オモテ」の顔に挟まれているために、光が眩しければ眩しいほど影はいよいよ濃い。あの薄暗く細長い公園は、渋谷の「ウラ」の顔を晒していた。常に薄暗くジメジメしたイメージで、渋谷という「谷間」の、さらにもっとも底辺に吹き溜まった、かなり後ろ暗いイメージを抱えた場所だったのはよく憶えている。

 その「ウラ」だった宮下公園が、このリニューアルで突然「オモテ」に引きずり出された。オモテ-ウラ-オモテだった場所が、オモテ-オモテ-オモテに変貌したのだ。そもそも、公園という平らな「空き地」に3階建ての大きな建造物を建てたのだから、リニューアルというよりはもはや全くの別物を作ったと言っていい。建物を作ったのだけれど、かつての公園=空き地の記憶を消さずに残しておくために、屋上を公園にしたというような。

 かつての公園は、青空のもと空中へと浮かび上がったのだ。

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 そのルーフトップパークの上空を、青空と白い雲を背景に背負って飛行機が次々と通り過ぎてゆく。春先に羽田空港の離着陸のための飛行機の侵入ルートが変わってから、この辺りは以前より低い高度で飛行機が飛ぶようになった。それを、以前より空に近づいた公園から眺める。

 まるで、上空と地上と、お互いに一歩ずつ近寄ったようだ。

 

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 パークの一角には、新しいハチ公像の姿も。

 

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 ミヤシタパークに行く前には、隣の原宿駅前に寄って、こちらもオープンして間もない「ウィズ原宿」(WITH HARAJUKU)に入ってみた。初めての都市型店舗が話題の「IKEA原宿」が目当てだったが、ここは施設の建物そのものが面白かった。

 上の写真は、ビルの前から後ろまで突き抜けるようなウッドデッキ。風が完全に吹き抜けて、かつ陽射しを完全に遮ってくれて、実に爽やかな空間だった。

withharajuku.jp

 

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 帰り際、代々木公園にて。

 傾きはじめた陽射しに照らされて。

(写真は全てCanon EOS Kiss Mにて撮影)

(2020年8月16日投稿)